【表紙ページ】 『難病者の社会参加白書2025』 ~RDワーカーの可能性~ 【3ページ】 #はじめに 難病者の社会参加を考える研究会 座長 真野 俊樹 世の中が変化してくる中、近年、難病を抱える方々の就労環境は改善されつつあります。一つには、多様性を受け入れようという大きな流れがあり、障害者、難病患者もダイバーシティであるという考え方にのっかっています。 もうひとつは、日本の人口減少に伴う雇用者の不足です。その解決に、子育て中の女性の就労問題、いわゆるM字カーブの改善と、高齢者の就労の2つがあげられてきました。実は、M字カーブは改善されつつあります。M 字カーブが解消されてきた要因として、①未婚の女性が増加したこと、②育児をしながら働く女性が増加したことがあげられます。特に、2020年代以降は、M字カーブはよりなだらかになり、かつてのような急激な低下は見られなくなっています。理由は、女性の就業継続率が上がり、共働き世帯が一般化したことや、テレワークの普及や柔軟な働き方の選択肢が広がったことがあげられます。 高齢者の就労はどうでしょうか? 実は、65歳以上の高齢者の就労は、日本は極めて高いのです。 日本(2023年)25.2%、韓国(2023年)37.3%、アメリカ(2023年)18.7%、カナダ(2023年)14.4%、イギリス(2023年)11.3%、ドイツ(2023年)8.9% (※資料1) このように、働く人が増えてきているのに、まだ足りない現状があるのです。 厚生労働省は、2013年に「難病患者就職サポーター」制度を創設し、現在では全都道府県に配置されています。これにより、難病患者への就労支援体制が強化され、就労人口の増加に寄与しています。 さらに、コロナ禍により、在宅勤務が普及してきました。難病の患者さんも、家から仕事ができるのです。日本においては、通勤は大変です。昔は「通勤地獄」と言われたくらいです。難病の患者さんにとって、在宅での勤務は、大きなメリットになります。 また、医学の進歩により、治療を受けながら就労を続けることが可能な方も増加しています。 とはいえ、厚生労働省の調査によると、難病患者の就労率は少しずつ向上していますが、一般の労働者と比べると依然として低い状態です。 今後どうすればいいのでしょうか?ひとつには企業の理解向上があります。難病というとよくわからない難しい病気のイメージがありますが、確かに病気の原因が難しくても、働くことができる人も多いのです。難病者の雇用に対する企業の理解が進み、合理的配慮(勤務時間の調整、休憩の確保など)を提供するケースが増えています。 しかし、障害者手帳を所持していない難病患者の就職活動や職場での配慮には依然として課題が残っています。日本難病・疾病団体協議会(JPA)の調査では、企業の制度導入率(合理的配慮提供義務、差別禁止、治療と仕事の両立支援策として約30 の具体的項目の制度導入率)は平均20%未満であり、特に中小企業では対応が遅れていることが指摘されています。(※資料2) これらの状況を踏まえ、難病患者の就労支援策のさらなる充実が求められています。この白書が、そんな流れでRDワーカーが増えることと、さらに難病患者の社会参加に一役買えると信じています。 (※資料1)統計局「労働力調査」www.stat.go.jp/data/topics/pdf/topi142_02.pdf (※資料2)JPA「難病患者就労支援状況 会社の制度や職場での対応に関するアンケート」https://jpaflat.jp/2024/11/19/4558/