【24ページ】 ##4 難病者の社会参加を考える研究会の概要と活動 ###研究会について 私たち難病者の社会参加を考える研究会では、国内に700万人以上の難病者(本白書1-1及び1-3参照)がいると推計しています。その存在を社会から十分に認知されず、制度の狭間で孤立し、就労・社会参加の機会が限られています。私たちは、このような現状に課題意識を持ち、2018年に当事者・支援者・企業・医療者らと「難病者の社会参加を考える研究会」(以下、研究会)を立ち上げました。 主な活動としては、Ⅰ.政策提言活動、Ⅱ.認知啓発活動、Ⅲ.就労モデルの研究、Ⅳ.難病者の就労・社会参加に関する調査、等を行っています。 上記活動の全体を取りまとめるものとして、2021年に『難病者の社会参加白書』を発行し、2022年には、第17回マニフェスト大賞 優秀賞を受賞しました。この度、第2号となる本書『難病者の社会参加白書2025』を発行しました。 難病者の社会参加は、彼らが単に支援の対象なのではなく、働き方のありようを変え、誰もが暮らしやすい社会の実現に中心的な役割を果たす可能性のある存在、として認知されると私たちは信じています。 私ども研究会の概要と活動について、以下ご紹介します。 ###研究会の概要 名称:難病者の社会参加を考える研究会 設立:2018年11月 目的:難病者の就労・社会参加の機会向上を目指す 発起人:重光 喬之(難病者) 事務局:〒150-0002 東京都渋谷区渋谷3-26-16 第5叶ビル5F co-ba shibuya内 特定非営利活動法人両育わーるど コンタクト:両育わーるどホームページ「お問い合わせフォーム」からご連絡ください。 研究会メンバー構成(2025年3月31日現在) 【研究会委員】 真野 俊樹 研究会座長・中央大学大学院教授/多摩大学大学院特任教授/名古屋大学未来社会創造機構客員教授/医師 池田 昌人 ソフトバンク株式会社 コーポレート統括 CSR 本部本部長 兼 SDGs 推進室長 小野 貴也 VALT JAPAN 株式会社 代表取締役 宿野部 武志 一般社団法人ピーペック 代表理事 進藤 均 株式会社ゼネラルパートナーズ 代表取締役社長 辻 邦夫 元一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会(JPA)常務理事 森岡 秀樹 株式会社世田谷サービス公社 取締役 第二事業部ICT推進部長 林 泰臣 ノックオンザドア株式会社 代表取締役社長 重光 喬之 NPO法人両育わーるど 理事長 【主要研究メンバー】 伊東 章良 袖ケ浦市議会議員 梅原 みどり ソフトバンク株式会社 CSR本部多様性推進課 担当課長 鹿島 早織 株式会社ゼネラルパートナーズ atGPジョブトレお茶の水 副施設長 近藤 菜津紀 獣医師、難病当事者 斉藤 幸枝 元行政職員・元患者団体役員、難病者家族 田中 茂 元行政職員・元企業役員 名和 杏子 就労支援員、難病当事者 山﨑 桜 株式会社 電通デジタル 総務部 共生社会推進グループ 森 一彦 元就労支援員、難病当事者 【オブザーバー】 木野 ゆりか 薬剤師・博士(薬学) 星山 純史 みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社 デジタルイノベーション室 龍治 玲奈 社会変革推進財団(SIIF) 他多数 ###研究会の活動実績 1)地方議員勉強会の開催、地方行政へのアプローチ ###Ⅰ. 政策提言活動 1 地方議員勉強会の開催 ・党派を超えた地方議員勉強会を継続して実施、2023年から5回実施、延べ参加議員全国から120名以上 ・別途、議員との作戦会議を個別に実施 ・勉強会参加議員からの議会質問:累積15自治体×議会質問26回 (2022年)袖ヶ浦市、(2023年)袖ヶ浦市、焼津市、鹿嶋市、北区、津山市、三次市、目黒区、山梨県、荒川区、伊丹市、伊奈町、(2024年)袖ケ浦市、木更津市、沼津市、焼津市、目黒区、鹿嶋市、津山市(2025年)山梨県、港区、東京都、北区、鹿嶋市 ・議会質問がきっかけとなった実績例 目黒区:難病カフェを定期開催 荒川区:荒川区議会が全会派一致で「難病患者の社会参加及び就労機会の拡充を求める意見書」を国会と政府宛に提出 山梨県:県正規職員採用試験に障害者枠とは別に難病患者枠を設定(全国初)、3名が合格し2025年4月から職員として働いている 〔画像:「難病者の社会参加を考える議員勉強会 研究会×地方議員」Web掲載用画像〕 2 地方行政へのアプローチ ・自治体人事課や福祉課との懇談:世田谷区、調布市、三鷹市、奈良県川西町、神奈川県、山梨県、港区、千葉県等 ・2019年、2023年世田谷区長選現役候補マニフェストに”難病者の就労支援”を記載 2)要望書・提案書の提出 ・「難病のある人への就労門戸の拡大を求める要望書」自治体首長5件(2020年10月) ・「難病のある人への就労と社会参加の前進に向けた取り組みのお伺い」自治体職員466件(2020年12月) ・「障害者雇用促進法の対象拡大について」国会議員、厚生労働省(2021年3月) ・「難病者の孤独孤立対策について」国会議員、内閣官房(2021年3月) ・「孤独・孤立対策の具体化に向けた難病患者を含む更なる取組みを求める要望書」厚生労働大臣、孤独孤立対策担当大臣、内閣官房孤独孤立対策室長、衆議院厚生労働委員長(2021年6月) ・「制度の狭間で孤立する難病者の孤独・孤立対策について」小倉孤独・孤立対策担当大臣(2022年11月) ・「難病者の就労・社会参加に関する提案」1788自治体(2024年12月) 3)政府の孤独孤立に関するフォーラムにて制度の狭間の難病者について提言 ・2021年末の内閣官房の孤独・孤立対策の重点計画 に”難病等の患者”が明記 ###Ⅱ. 認知啓発活動 1)『難病者の社会参加白書』前号2021年版の制作・発行 全国の都道府県知事・市区町村長宛、1915自治体へ送付 2)『難病者の社会参加白書2025』本号の制作・発行 全国の都道府県知事・市区町村長宛、支援機関宛に送付 3)クラウドファンディング クラウドファンディング「制度の狭間にいる難病者700万人の社会参加の選択肢を増やしたい」(本白書の印刷費・発送費)を2024年12月~2025年2月に実施、目標400万円に対し支援者351名から支援総額426万円を達成、新たな共感の輪を広げた 〔画像:「制度の狭間にいる難病者700万人の社会参加の選択肢を増やしたい」クラウトファンディングWebサイト画像〕 4)《はたらく難病ラボ》WEB開催 難病者の社会参加を考える会と、とりすま・イースマイリーが共同で企画・開催するオンライントークイベント。2022年2月からのべ10回開催。毎回、 社会参加する難病当事者をゲストに、それぞれの生き方・働き方等についてディスカッションしている(アーカイブYouTube公開) 〔画像:「はたらく難病ラボ」Web掲載用画像〕 5)オンライン報告会・勉強会を開催 ・オンライン報告会を2022年から毎年開催 ・「職場における障害者・難病者の合理的配慮勉強会・オンライン報告会」(2024年12月14日開催)自らも難病当事者である青木志帆弁護士をお招きし、障害者雇用促進法における合理的配慮の基本的な考え方や職場でのポイントについて考察した 〔画像:「職場における障害者・難病者の合理的配慮勉強会・オンライン報告会」Web掲載用画像〕 〔写真:「職場における障害者・難病者の合理的配慮勉強会・オンライン報告会」参加者25名集合写真〕 6)イベント・講演会への参加(一部紹介) ・「京都大学バリアフリーフォーラム2022」(2022年11月12日)参加・発表 ・「RDD Japan 15周年イベント 〜Let’s celebrate the 15th RDD Japan MATSURI together!」展示参加(2024年2月29日) ・「LIVES TOKYO2024」パネル展示(2024年9月28日) ・一般社団法人新時代戦略研究所(INES)『第1回 患者・市民大集会 〜患者・市民の声を届けよう〜』参加・発表(2024年12月2日) ・「A YEAR TO GO SYNC25 VALUABLE500 ACCOUNTABILITY SUMMIT」のパネルディスカッション登壇(2024年12月3日) ・ゲンロン友の会第15期総会「雑談復活」第2部「五反田から世界を変える──友の会プレゼン祭り」登壇(2025年3月22日) ・国立病院機構北海道医療センター「令和7年度「5月23日は難病の日」記念講演会」登壇(2025年5月21日) ・シブヤ大学授業「正解のない”はたらく”について」(2025年7月19日)先生役 〔写真:「京都大学バリアフリーフォーラム2022」看板前で立つ3名の記念写真〕 7)メディア掲載・執筆活動(一部紹介) ・社会参加未だ阻む「壁」 難病患者の厳しい就労環境 アンケートで追う 毎日新聞(2022年3月22日) ・難病でも働くこと諦めないで 週20時間未満 個々の能力発揮 毎日新聞 (2022年5月22日) ・難病と在宅ケアvol.29『制度の間で孤立する難病者の就労・社会参加に関する実態調査から見えてきたこ』(日本プランニングセンター2023年9月1日) ・『語りの場からの学問創成』共著(京都大学学術出版会2024年3月31日) 障害・依存症・難病の当事者の語りの場から学問が生に対する意義を回復する、をテーマに企画された書籍に、「痛みのある人生を生きる~社会と繋がるための私の試行錯誤~」を重光が執筆 ・雑誌『厚生労働』2024年7月号「居場所図鑑」に記事 〔写真:雑誌『厚生労働』2024年7月号表紙の写真〕 ・NHKハートネットTV 『10月特集 働きたい〜難病と企業の今〜』 (初回放送日:2024年10月14日)制作協力、重光が出演 (番組内容はQRコードから) 〔画像: NHKハートネットTV 『10月特集 働きたい〜難病と企業の今〜』の一場面。右側重光〕(画像提供 NHK) ###Ⅲ. 就労モデルの研究(意見交換会を中心に) 働きたいけど働けない多くの難病者が、社会の水面下に眠っている現状では、新しい働き方の発見・共有・研究と、就労事例の蓄積が大切です。私たち研究会では、委員企業を中心に「意見交換会」を開催し、難病者の社会参加に関わる社会・政府の動向と、新しい働き方や就労の事例を探し、研究しています。 研究会意見交換会の開催(詳細は本白書第Ⅰ章5を参照) ・2022年度第1回意見交換会(2022年5月30日) 週20時間未満勤務も障害者雇用率参入へ、内閣官房全世代型社会保障構築会議、実態調査、『難病者の社会参加白書』の発行、孤独孤立対策に難病を含める要望書提出 ・2022年度第2回意見交換会(2022年10月5日) 難病患者に「登録者証」発行、障害者雇用の大量退職時代が到来、明石市にて難病者の雇用開始、(事例紹介)ソフトバンク、VALT JAPAN、ピーペック、世田谷公社等 ・2022年度第3回自治体意見交換会(2023年1月31日、2月10日) 職員が難病になった時の支援体制、難病者を新規に採用出来る可能性、自治体として難病者雇用の推進計画を策定する上での課題・問題点について等 ・2023年度第1回意見交換会(2024年3月6日) (事例紹介)目黒区:難病カフェ、山梨県:県正規職員採用試験に難病患者枠(日本初)公表、ショートタイムワーク(ソフトバンク)、鎌倉モデル(VALT JAPAN) ・2024年度第1回意見交換会(2024年6月3日) 「難病白書」第2号の発行、当事者視点の新しい判断基準の検討(痛み・疲労・変化量等)、「難病者の就労」を水面下から社会課題に広げる活動を ・2024年度第2回意見交換会(2024年9月10日) 荒川区議会が国に意見書提出、難病患者の法定雇用率への組み込みには法改正が必要で議論はまだ初期段階、法改正、啓発活動、企業連携、資金調達、情報発信等を議論 ・2024年度第3回意見交換会(2025年1月28日) 合理的配慮勉強会 青木弁護士 12月14日開催、『難病白書2025』クラウドファンディング 12月14日開始、地方議員勉強会山梨県・荒川区・目黒区の事例紹介 1月23日開催、ワーディングPJT、可視化+トリセツPJT ###Ⅳ.難病者の就労・社会参加に関する調査 病名を越え、難病者の就労、社会参加の取り組みを進めるために、まずは実態を把握しようと難病者、企業(人事担当、経営者)、地方自治体、地方議員にアンケート調査を実施しました。 ・2018年「指定難病等に含まれない希少疾患患者の生活実態と関連要因に関する研究」 ・2020年「難病のある人の就労・社会参加に関するアンケート」当事者編、経営者編、人事担当者編 ・2021年「難病のある人の就労・社会参加に関するアンケート」一部の自治体対象 ・2022年「難病のある人の雇用に関するアンケート」全自治体対象 (上記調査の詳細は両育わーるどホームページ「ライブラリ」⇒「調査等」を参照) ・2024年「難病者の就労・社会参加に関するアンケート調査」(本白書の第Ⅱ章掲載)当事者編、企業編、自治体編、地方議員編