【98ページ】 ##難病者の雇用に関するアンケートー 地方議員編 ー ###難病者の雇用に関する調査 / 対象:全国地方議会議員 本調査は、全国の地方議員による難病の認知・理解を把握し、議員活動や議会質問などから今後の地方行政、立法のあり方や先進事例を検討するための知見を得ることを目的として実施したものです。   具体的には、全国の地方議員を対象に 難病への理解や指定難病以外の難病への認識 議会質問を行う際のハードル 山梨県の難病者を対象とした採用施策の認知と所属自治体での実施について といった点について問い、難病者の実態の見えなさ、地方議員の関心の高さと政策で捉える際の制度区分上の扱い方の難しさ、地方議会での実状と可能性などについて、多くの重要な示唆を得ました。   本レポートが、全ての人が安心して働ける社会の実現への一助となれば幸いです。 調査概要 調査目的:地方自治体の政策形成に重要な役割を担う地方議会議員を対象に、難病者支援施策に対する意識や課題認識を明らかにする。 調査地域:全国 調査対象:全国の都道府県・市区町村議員 調査方法:Web調査 サンプル数:54 調査期間:2024年11月27日(水)~2025年1月27日(月) 調査主体:難病者の社会参加を考える研究会 実査管理:NPO法人両育わーるど ###難病者の雇用に関する調査 / 対象:全国地方議会議員 主な調査結果 難病者への支援の重要性を認識 難病者の就労支援の必要性は十分に認識されており、回答者の約7割(69%)が難病者の就労を支援する施策を「議会で取り上げたい」と答えた。 課題は実状認識不足 議案化に積極的でない3割の人は、ほぼ一致して「実情認識が不十分で研究や実態把握に時間がかかる」ことを理由に挙げた。難病者支援が「優先度が低い案件」だとの見方はないため、問題は「実態の見えなさ」だと言えそう。 自由回答においても、取り組みたいこととして「難病者の現状・実態の把握」「正しい知識と理解の促進」を挙げる声が多く聞かれた。 山梨県の難病者対象の採用枠施策への評価は高く、検討にも前向き。ただし実現には一定のハードルも。 「よい施策である」85%、「当自治体でも取り組むべき」82%、「実現は難しくない」54%。 難病者雇用を議案化するために/社会全体で受け入れていくためにまずは現状把握と理解促進 難病者の雇用支援の推進は、共生社会の実現に向けた重要な地方議会の役割と認識されている。 そのためには当事者のニーズや難病の実態への正しい理解が不可欠で、多忙な議員の方たちが効率的に情報や当事者の声に触れられる仕組みづくりが求められる。(ex.議員同士の情報交換や事例紹介ができる場、議会質問バンクなど) また、一般の人々においても、難病のある人の実情(日々の生活や就労に際して何を望み、何に困っているのか)への理解が広まることが非常に重要である。 「誰もが働きやすい社会」をめざし、議会・行政・市民が連携して難病者支援に取り組むことが期待される。 ###回答者プロフィール 本調査の回答者の所属自治体は、地域では中国・四国、自治体種類では「市」、人口規模では「2~10万人未満」が多い。 個人プロフィールは「40代~60代」で8割強を占め、その中では比較的「60代」が多い。当選は「1期」が多く、男女比はほぼ均等。 ###難病に関する知識 難病について、比較的よく知られているのは「根治が難しく多くは慢性化すること」「症状に波があり体調の予測が難しいこと」。 知られていないのは「推計700万人以上であること」。 「難病法による定義」「制度の狭間で公的支援が受けられない難病者がいること」「指定難病に該当しない難病が多くあること」は認知者の方が多いものの、3割強が非認知または誤認している。 【提示した説明文】 「難病」とは、「発病の機構が明らかでなく、治療方法が確立していない希少な疾病であって、当該疾病にかかることにより長期に渡り療養を必要とすることとなるもの」と規定されています。国内で「難病」のある人の数は数百万、一説では700万人以上と言われています。しかし、「難病法」の定めにより国の医療費助成の対象となる指定難病に該当する人は105万人にとどまり、障害者手帳も、指定難病受給者証(及び登録者証)もない人は、制度の狭間で孤立しています。 「難病」は根本的な治療は困難であり、多くは慢性となります。痛みなどの症状が活動に影響を及ぼしますが、日によって症状に差があり、体調の予測ができないことがよくあります。 本調査での難病とは、指定難病・希少疾患・その他難治性慢性疾患の患者で本人が難病と認識している方も含めます。 ###難病者との接触・相談経験 回答者の6割が「難病者が周囲にいる」と答えている。うち「本人」4%、家族13%と、難病に対して高い当事者性を持つ「高関与層」も一定数含まれる。 難病者に対するヒアリング・相談経験率は55%。 ヒアリング・相談経験率は「精神障害者」がもっとも高く、次いで「医療的ケア児」。「ヤングケアラー」では著しく低いことに顕在化していない課題が垣間見える。 ###難病者に関する議会質問 この3年内に難病者に関する議会質問があったのは37%。就労支援や福祉サービスに関してのものが多かった。 69%が今後難病者への就労支援施策を取り上げる意向があると答えている。 議会質問に消極的な人は知識や実状への理解の不足を理由に挙げている。 ###山梨県の難病者枠による職員採用施策の認知・評価 山梨県の難病者対象の採用施策の認知は約3割。(採用活動は2024年・就労開始は2025年4月) 「よい施策である」85%、「当自治体でも取り組むべき」82%と高い評価。ただし「実施は難しくない」は54%と下がり、現実の導入にあたっては越えるべきハードルもある模様。 ###難病者雇用についての考え・取り組みたいこと(全自由回答) 質問: 難病などがある人の就労支援に関して、あなたのお考えや取り組みたいことがあればお聞かせください 難病者雇用支援を議案として取り組むため、まずは実態の把握に努め、正しく理解したいとの考え。当事者・関係者の声を聴くことが重要と認識されている。