【ページ153】 ##患者・家族のドアを叩き声を聴き、形にして社会に届ける ノックオンザドア株式会社 代表取締役CEO 林 泰臣 1.はじめに 当社は、2018年7月に「難病者・家族が輝き、自分らしい人生を送れる社会の実現」をパーパスに創立したITベンチャー企業です。第一弾として、2020年に“てんかん”をもつ方とその家族をサポートするための「nanacara(ナナカラ)」というプラットフォームをリリースし、当事者・ご家族・専門医等の医師に向けてサービスを提供しています。 nanacaraは日々の症状を簡単に記録し管理することのできる当事者・家族向けのスマートフォンのアプリ、その記録を専門医等の医師が閲覧することのできるWEBツール、その他、てんかんの専門医とつながることのできる遠隔診療サービス、専門知識を持った薬剤師とつながることのできる薬局サービス等、複数のサービスで構成されている総合プラットフォームとなっています。 サービスのリリースから約5年が経ち、多くのてんかんをもつ方、ご家族、そして医師の先生方にご利用を頂き、診療に関する効率化、そして質の向上に繋がり始めています。 〔写真:nanacara(ナナカラ)のアプリ使用の様子〕   2.当社の取り組み 当社の特徴はパーパス実現のために、難病者・家族とチームを創り、共にアプリ等のサービスを開発、そして運営をしていることにあります。実際に経験や想いをもつ方々と共に創ることにより、より使われるサービスとなり、共に運営していくことで、より必要な人々に伝わり広まるプラットフォームとなっています。この背景から当社では業務委託を含め難病者や難病者の家族が、その他多くのバックグラウンドを持つ従業員と共に複数人働いています。 3.具体的な施策について 当社では、難病者や難病者の家族、そして多くのバックグラウンドを持つ多様性を持った従業員が働きやすい環境となるよう、フルフレックス制とし、従業員ごとに1ヶ月の就労時間の目安を決め、その上で1ヶ月の就労日や1日の就労時間は原則当人に委ねる仕組みとしています。合わせて、フルリモート制も取り入れることにより、働く場所についても自宅含め自由に働ける環境としています。 また、難病者と難病者の家族も、システム開発、ユーザサポート、新規事業開発等、それぞれ他従業員とチームを組み共に仕事をする体制としており、例えばユーザサポートチームにおいては、これまでユーザサポートを経験してきた従業員から対応手順をレクチャーしてもらいつつ、難病者やその家族だからこそできる、疾患を持つ人やその家族への気持ちも理解したうえでの寄り添いを持った対応を行い、チームとしての業務の質を高める等、組織としてお互いが支え合いながら業務を行っています。   4.課題と対策について 2018年の創業から2024年で6年が経ち、難病者、難病者の家族、他従業員が働く組織としての課題も見えてきました。組織の規模が大きくなることにより、難病者、難病者の家族が所属するチームの業務量も増え、その分仕事で関わる人数も増えてきています。 これにより、これまでは難病者自身の体調や、家族の難病者の体調により急遽業務につけない場合に、調整すべき人数は少なく連携が比較的うまくいっていたものが、人数が増えることにより、連携がうまくいかず仕事に影響が出てしまうことが出てきました。 仕事への影響だけではなく、チームとしての信頼関係にも一部支障が出てしまうケースも出てきており、会社全体の課題としても捉えています。   この背景には、同じチームとして働く難病者や難病者の家族への理解が薄い従業員も出てきていることが要因として挙げられます。人数が少ないうちは、自然と個人と個人のコミュニケーションの量と質も比較的高く、難病者当事者や家族の難病者がどのような症状があり、どのような生活を送り、どのような配慮が必要か、ある程度を理解することが日々の業務の中でできていました。しかし、その人数が増えることでどうしてもコミュニケーションが希薄化し、症状や生活、配慮が必要な内容といった事柄への理解が日々の業務の中では難しくなってきていると感じています。 当社では、その課題の解決のためにも、3ヶ月から4ヶ月に1回、全従業員が参加するオンラインも交えた2日間にわたる合宿を開催しています。合宿の内容としては会社全体の戦略や戦術の共有と議論も勿論ながら、難病者・難病者の家族、そして他従業員のそれぞれのこれまでの人生や大切にしていることなど、お互いを知ることにもフォーカスを当てています。これにより、難病者や難病者の家族も含めて、その人の症状や配慮しなければならないことは勿論ながら、どのようなことを目指しているか、そのために何に困っているか等、よりチームとして会社として皆が支え合える環境作りに挑戦しています。   5.今後の展望 当社は「難病者・家族が輝き、自分らしい人生を送れる社会の実現」というパーパスに向けて、より良いサービスを難病者やその家族に届けていくことは勿論のこと、それを当事者やその家族と共に実現していくことを大切にしています。そのためにも、難病者や難病者の家族、そして共に働く従業員皆がお互いに理解をしあい、尊重しあい、助け合う、そしてチーム全体で成果を挙げていくプロフェッショナルな組織づくりが必要であると考えています。私たちはこの先も、その実現に向けて課題に向き合いながら、その実現に挑戦していきたいと思います。   ###・PROFILE・ はやし ひろおみ:ノックオンザドア株式会社を2018年7月設立。パーパスは「難病者・家族が輝き、自分らしい人生を送れる社会の実現」、ミッションは「難病者・家族を光に社会にイノベーションを起こす」。2020年3月“てんかん”をもつ方とその家族をサポートするためのアプリ「nanacara(ナナカラ)」(QRコード参照)をリリース。nanacaraというネーミング・ロゴには、一人一人が色が違う個性として大切にでき輝ける世界を作りたいという想いを込め7つのカラーで虹を表している。2024年6月「nanacara」が30,000ダウンロード突破、同年10月 発作記録数1,500,000件突破、同年11月「nanacara薬局」が第8回みんなで選ぶ薬局アワード特別審査員賞を受賞 ナナカラURL:https://nanacara.jp/