【ページ148】 ##8さまざまな障害や難病があることを広く知ってもらう取り組み NPO法人両育わーるど 谷山 麻衣子 ##はじめに ここでは、NPO法人両育わーるどにおけるTHINK UNIVERASAL事業での新しい取り組みについて、ご紹介していきます。THINK UNIVERSAL(TU)事業では、知る、体験する、対話するのステップを通して、障害や難病を超えて、自分について、社会について、ちょっと考えるきっかけを提供しています。2024年からは新たな対話プログラムをスタートし、企業や団体様向けに実施しました。 THINK DIVERSITY ~知らないを想像する~ ①プログラム内容(表) 時間 テーマ ワーク詳細 00~10分 導入 両育わーるどの活動紹介 10~30分 想像パート 当事者のシンプルな属性情報を元に、数名のグループで当事者の心理・日常・就労などについて想像し、話し合います。 30~50分 対話パート 当事者とともに答え合わせ、対話を行います。 50~60分 振り返り プログラムを通じて感じたことをシェアします。 ②想像パートのテーマ例 1)「病気があることによる過去の葛藤」 その人が過去に経験した【病気との葛藤】を想像し、話し合います。 その人の現在の姿だけでなく、過去の経験にも思いを馳せ、相互理解を深めます。 2)「就労において、この人自身が感じている不安」と「就労において周囲の人が感じている不安」就労に関わる当事者自身や周囲の不安に焦点を当てます。 3)「安心して働くために、【お互いに】できる働きかけは何か?」 ③ディスカッション例: 当事者Oさんの情報 病名:黄斑(おうはん)ジストロフィー 就業状況:メーカー企業のセールストレーニング(企画・実施) 発症年齢:19才(手帳取得は23才) 発症時の状況:大卒のタイミングより、進路再検討(ゼロベースでの見直し) 現在の症状:白杖が必要な一歩手前 【過去の葛藤】 参加者の想像: ・若いときに発症しているので、周りの人たちは就職活動、就職、恋愛、将来の話をしているときに 自分だけ取り残されている感じが、葛藤としてあったのでは。 ・進行性でだんだん見えなくなっていくということだと、生活が不自由になっていく中で、 自分の生活スタイルをつかまなくてはいけない、就職できたとしても全盲になったとして、 仕事を続けられるのかという不安もあったのでは。 ご本人の声: ・職場で認められる成果を示せないのは、障害のせいか、能力のせいか、 割り切れない自分にイライラ ・目が悪くても「できる」ことを見つけられない周りがいけないのか ・能力あることを「みせる」ことができない自分が悪いのか 【就労における不安】 参加者の想像: ・営業職の方への研修をする仕事ということで、自分の疾患を理解していない、 慣れていない研修受講生との意思疎通やコミュニケーションに不安を感じそう ・症状が進行した場合に仕事を続けられるのか。 キャリア形成、収入が増えるように動いていくことが難病者ではない方と同じようにできるのか? ・職場の人の立場からすると、見えない世界が想像できない。 どのくらいのサポートが必要で、何に気を付ければ良いのかわからない。 そのため助けすぎたり、助けが足りなかったりするかも。 ご本人の声: ・チャレンジ・再現性 ・周囲への影響力を、継続的に発揮できる 「心技体」か? 【お互いにできる働きかけ】 参加者の想像: ・本人がこうしてほしい、こういうデータでいただきたい、というのを安心して言える職場が必要。 積極的に言っていいよという職場だと良いと思う。 ・自分はこういうことが不自由なのでこれは手伝ってほしいが、これはできるのでこういう仕事を 回してくださいと共有しておくのも大事。進行性の病気だと状況が変わると思うので、自分に関する 情報のアップデートも必要だと思う。 ・合理的配慮を申し出たときに新しい仕事をもらうチャンスが なくなるのでは。職場の人は自分の症状について知るために働いているわけではないので、 自分のことについては明文化して伝えるのが大事。 ご本人の声: ・「心技体」それぞれを最大化するための 感情的知性(EQ)・グロースマインドセットの醸成 阻害要因となる「フィックストマインドセット」に対処する ④参加者の声 ・制約との向き合い方に新しい視点を得ることができました。 ・病名から想像していた苦手な事得意な事がご本人の回答と全く違ったため、多岐に渡り、一人一人と会話してみないと分からないということを実感した。 ・当事者の方がとても前向きだったことが印象に残りました。 ・非常に貴重な体験をさせていただきありがとうございました。障害の有無に関わらず、個人の特性や障壁があることを意識して誰もが働きやすい環境になるよう考えて行きたいと思います。 THINK UNIVERSAL(TU)事業では、「知らないを知る」をミッションにプログラム提供を通じて「難病や障害があってもなくても、話しやすい・働きやすい場所が広がること」をめざしています。現在の姿だけでは、分からないことがたくさんあります。 その人の過去や未来も想像することで、相互理解が深まっていくのではないでしょうか。 障害や難病がある人もそうでない人も、誰もが自分らしく生きられる社会への第一歩になれたら幸いです。 プログラムの提供、協働開発など、ご関心をお持ちの方はお問い合わせフォームよりご連絡くださいませ。 https://ryoiku.org/contact/ ◇その他のプログラム〔それぞれの実施写真付き〕 「知る」「想像する」「体験する」「対話する」の目的に応じたコンテンツにより行動変容の機会を提供 「知る」THINK POSTER:障害や疾患の存在を認知、講演:障害や疾患の現状を知る 「想像する」THINK DIVERSITY:共に学び理解を深める 「体験する」THINK BOX:障害や疾患について理解を深める 「対話する」ヒューマンライブラリー:相互理解を深める