【213ページ】 ##Episode-13 病気になった私の人生の歩み方(山根 優花) ###病気と仕事 私の場合、発症1年半後頃から潰瘍性大腸炎の症状は安定し、寛解しています。そのため、入社時に特段の配慮事項はありませんでした。ただ、短期間ではありますが、過去に数回、やや体調が悪化(下血等の症状)した経験があることから、万が一体調が悪化した時のためを考えて、事前に病気のことをオープンにして就活を行っていました。 また、進路選択や志望動機に病気が大きく関わっていたため、改まって伝えるというよりは、就活時に選考内で自然に病気のことを伝えていきました。適切に病気のことを伝えられるよう、現在の症状、悪化した際に想定される症状、悪化した際にいただきたい配慮事項等、伝えたいことを事前に整理したうえで選考に臨むよう心がけていました。 新卒入社時、新型コロナウイルス流行中であったこと、また事業部としても在宅勤務が推奨されていたため、週4日程度在宅勤務を行っていました。フルフレックスの制度もあり、体調に応じて調整しながら、1日のスケジュールをたて業務に取り組むことができていました。 在宅勤務やフレックスがあることで働きやすくなるものの、常に自分も含め他メンバーの顔や様子がみえる状況ではありません。「ちょっと今日はおなかが痛い…」等、チームに業務フォローをいただく可能性がある際には全体に共有する。「下血が数日続き通院頻度が上がるかもしれない、再燃する可能性があるかもしれない…」と感じた際には早めに上長に通院予定等のネクストアクションと一緒に共有するなど、少しでも体調に違和感がある際には、自分から積極的に発信するようにしていました。 直近、週3~5日出社と異動により働き方に大きく変化がありました。異動前にも人事や配属予定先の上長に病気の概要、現在の症状、想定される悪化要因と配慮事項を伝えたうえで就業しています。出社頻度が増加しましたが、変わらず些細なことでも自分から共有するよう心がけています。 ###私にとって仕事とは 病気になったこと、私自身が考え悩んだ経験を機に、「誰もが自分の人生を生きていける社会」をつくりたいと強く思うようになりました。幸い、現在その願いや思いを仕事にすることができています。また、今後何があるか分かりませんが、どのようなかたちであっても、このビジョンを叶える仕事に携わっていたいと考えています。 使命感というよりは、考え悩んだ経験があるからこそ、自分にできることをしていきたい。自分ごととして考えられる部分もあるからこそ、ちょうどいいバランスで仕事にすることができているのではないかと感じています ###病気の伝え方 基本的に職場・親戚・友人には、病気のことをオープンにするスタンスでいます。就活時も含めて開示するかどうか悩んだ経験がありませんでした。うまく言語化できていないのですが、「病気も含めて私と考えていること、今の私のあり方に病気が大きく関わっていること」が大きな理由かもしれません。周囲の人からも時々体調を気にかける言葉もいただき、本当に感謝しています。おかげで体調が悪化した際なども雑談ベースでライトに共有することができています。 直近は寛解している期間が長いため、寛解後に出会った人に関しては特にはじめからは伝えず、雑談で病気の話になった際、体調の共有が必要な際に初めて伝えることも多いです。体調や状況をみながら、伝えるようにしています。   ###病気になった私の人生 病気になったことで視野が広がり、今まで見えていないことが多かったことに気がつきました。当時高校3年生だった私は、いい大学に行き、大きな会社に入って、結婚して出産することが幸せになる道だと思っていました。ただ、病気になったことで視野が広がり、人それぞれの生き方や選択、幸せがあることを知りました。同時に、入院等の経験から、今の社会では願いや望みを叶えることが難しい人、困難を抱える人がいることを知りました。病気にならなかったら、病気ではない私の人生があると思うので、病気になってよかったとは言えません。ただ、このようなことを知れたことは、私にとって心強く、勇気をもらいました。 病気になったことを機に、自分はどのように生きていきたいのか、どんな願いをもっていて何を幸せと感じるのか。初めて自分と向き合って考え、とても悩みました。診断された直後は絶望感がとても大きかったのですが、それでも「『今生きている』という事実のなかでどのように生きていくか」を大切にして過ごしています。 ただ、日々いろんなことがあるなかで、時に感謝やあり方を忘れかけてしまうこともあります。そんなときは、自分の生き方、願い、幸せについて、改めて向きあって考える。私は私の人生の道をそのように歩んでいきたいと思っています。 ###Profile 山根優花 やまね・ゆうか 1997年生まれ、18歳の時(2015年~2016年)に潰瘍性大腸炎、特発性血小板減少性紫斑病を発症。病気を機に、「誰もが自分の人生を生きていける社会」を目指したいと考えるようになり、大学で社会福祉を学ぶ。2021年に新卒入社した会社で、障害者雇用専門の人材紹介サービスにてキャリアプランナーを経験し、現在は新規事業の立ち上げに携わっている。 〔写真:寄稿者写真〕