【223ページ】 #資料編 【224ページ】 ##1 難病と就労に関する国への要望書 令和4年11月15日 孤独・孤立対策担当大臣 小倉 將信殿 難病者の社会参加を考える研究会 座長 中央大学大学院教授 多摩大学大学院特任教授 名古屋大学客員教授 医師 真 野 俊 樹 発起人 NPO 法人両育わーるど 理事長 重 光 喬 之 ###制度の狭間で孤立する難病者の孤独・孤立対策について 難病には、医療費助成の対象となる指定難病(338疾患・103万人)と治療法が不明だが人口要件に当てはまらない等の理由により、医療・福祉サービスの対象から除外されている指定難病に該当しない難病(6~7000疾患・700万人以上の希少疾患〔編集部注:National Institutes of Health (NIH)国立衛生研究所の米国有病者率から算出すると国内に700万人以上、国内に公的調査なし〕や難治性慢性疾患〔編集部注:線維筋痛症(200万人)や筋痛性脳脊髄炎、慢性疲労症候群(24万人)、化学物質過敏症、脳脊髄液減少症等の難治性慢性疾患)がある。これらの難病者は、障害福祉や指定難病の制度の狭間におかれ、医療費助成や就労支援の対象にもならず、結果として、社会参加に大きな不安を抱えており、孤立化を深めている。 昨年、自由民主党政務調査会 孤独・孤立対策特命委員会(特命委)において、積極的な議論をいただき、同特命委報告書に、『例えば、「難病」に指定されていない、希少で診断困難な病気に悩む方や、成人年齢以上でDV法による支援対象に当たらない親や兄弟からの暴力に苦しめられている方々の孤独・孤立に寄り添えるような、柔軟で弾力的な対応が求められる』と、「「難病」に指定されていない、希少で診断困難な病気に悩む方」と指定難病に該当しない難病にも言及をいただき、孤独・孤立に苦しむ関係者に大きな期待をもたらしました。 また、昨年末の内閣官房「孤独・孤立対策の重点計画」にて”難病等の患者”が明記されました。しかしながら、具体的な施策は出されておりません。具体的な施策を盛り込むために、ぜひ、来年度の予算要求に、指定難病以外の難病を含む難病者の実態調査を盛り込み、エビデンスに基づく施策を明示していただきたく存じます。 症状が変動する難病者の就労は、従来の固定した時間や場所等の勤務条件では困難さが伴います。勤務時間や勤務場所にとらわれない柔軟な働き方が求められます。「難病者が働きやすい職場」を実現することは、これまで就労の機会を奪われてきた障害者や家庭環境に困難を抱えた人たちの「働きやすさ」にもつながり、政府が進める「一億総活躍社会」の実現にも有効な手段となりえるものと確信しております。 従来の制度の枠にとらわれず、制度の狭間で孤立し、孤独に苦しむ難病者の社会参加も見据え、難病行政に前進をもたらすため、下記の事項を要望します。 記 一.来年度概算要求に、指定難病に該当しない難病を含む難病者の就労・社会参加の実態(孤独孤立に至った原因を含む)を把握するための調査費用を盛り込んで頂きたい。 二.上記調査結果(エビデンス)に基づく、指定難病に該当しない難病者を含めた、社会参加づくり計画の検討(制度外の難病者の就労に関するモデル事業実施)を始めて頂きたい。 三.障害者総合支援法(障害者手帳所持者及び指定難病含む366疾患)と障害者雇用促進法(障害者手帳所持者のみ)の対象者を一致させることで、就労機会を拡大して頂きたい。 四.就労支援や医療費助成等の制度の対象者について、疾病名等で判断されている指定難病だけでなく、生活上の困りごとに応じて支援を受けられるよう、エビデンスを元にした判断基準を作成し適用して頂きたい。 ###生活・就労支援からの孤立について 関連する法律など ・障害者総合支援法  状況 現在、6000〜7000種の希少疾患の700万人程度の患者がいるとされるが、国が対象とする366疾患の患者、または障害者手帳所持者以外は、障害福祉サービスの利用ができない。 関連する法律など ・身体障害者福祉法 ・精神保健及び精神障害者福祉に関する法律 ・療育手帳制度について(厚生省通知) 状況 障害者手帳の診断基準が、機能面の評価に重きが置かれており、疼痛や倦怠感といった慢性症状によって日常生活を送ることに困難が生じている難病患者が、障害者手帳を取得しづらい状況にある。 ###雇用機会からの孤立について 関連する法律など ・障害者雇用促進法 状況 障害者手帳を所持しない難病者が就労を望んでも、障害者雇用促進法の障害者雇用率に算定されず、雇用者が積極的に難病者を雇用しようとする動きが抑制され、雇用機会が拡大しない。 また、障害者総合支援法の対象者が、就労移行支援を利用できたとしても、障害者手帳がないため雇用機会が損なわれている。 ###経済的支援からの孤立について 関連する法律など ・難病の患者に対する医療等に関する法律 状況 国が定める338疾患以外の患者は指定難病患者への医療費助成制度の対象とならない。 関連する法律など ・保険診療 状況 治療や検査が保険診療の対象になっていない病態については、先進医療の対象となる/保険適応の対象となるまでに長い時間を要し、保険患者は医療費の全額自己負担を迫られ、高額療養費の還付も受けられない。 関連する法律など ・国民年金法 ・厚生年金保険法 状況 診断書の記載内容が、機能面の評価に重きが置かれており、疼痛や眩暈といった症状によって日常生活を送ることに困難が生じている難病患者が、障害年金を受給しづらい状況にある。