【234ページ】 ##難病のある人の雇用に関するアンケート(全国自治体調査2022年) 調査目的 地方自治体における難病者の雇用の現状を知り、今後の雇用促進をはかるための課題・方向性を探る ※配送不備により都道府県の調査未実施 調査地域 全国 調査対象 自治体組織において職員人事に関わる方 調査方法 1915自治体の首長宛に調査票を郵送し回答依頼(「難病者の社会参加白書」送付時に同梱)、WEBまたはメールにて回収 サンプル数 433 調査期間 2021年11月29日~2022年1月26日 調査主体 難病者の社会参加を考える研究会 実査管理 NPO法人両育わーるど ※調査結果はこちら:https://ryoiku.org/studygroup/ ###【調査結果の概要】 ###難病者の就労に関する自治体の意識・取り組み ・今回回答があった自治体で、基本計画・障害福祉計画に「難病」への言及があるのは55%。「不明」を除くと69%。 ・医療費助成が受けられる「指定難病」は難病者全体のごく一部であることの認知は60%、指定難病者にも障害者にも認定されずに支援制度の狭間に孤立する難病者が多くいることの認知は55%。 ・現在難病者を雇用していると答えたのは全体の37%で、「不明」を除くと55%。自治体の規模による差が大きい。 ・自治体が障害者・難病者を雇用する意義は、「当事者に希望を持ってもらえる」63%と「障害・難病の理解が住民対応に活きる」63%。「多様な特性のある人材で生産性が上がる」は8%にとどまる。 それぞれ自治体の規模に応じた取組みがなされているが、難病者の雇用は福祉政策としての意味合いが強い。難病者の置かれている状況についての認知も十分とは言えない。 ###難病者雇用の促進に必要なこと ・難病者の雇用促進に必要なのは、まず社会の/周囲の理解。そして難病の就労者を守り雇用側を支援する法制度、 職場での環境整備である。 ・法制度は、「障害者雇用率に難病者も加える」「雇用事業者に国からの助成」「雇用目標値設定(義務化)」など、難病者雇用を後押しするもの。 ・職場で望まれる施策は、「柔軟な勤務時間設定」「テレワーク」「通院休暇」など、時間と場所の自由度を上げるもの。 ・2020年に実施した難病者対象調査からも、当事者が「社会の/周囲の理解」 と共に「テレワーク」「体調に合わせた勤務時間・休暇の自由裁量」を求めていることがわかっている。 難病者就労促進の鍵は、「理解」が広がることと、「個人の状態に合わせた柔軟な働き方」が実現されること(~そのための法的なバックアップ) ###難病者雇用の阻害要因および解決策 ・阻害要因には雇用者側の体制整備に関わるもの(マネジメントノウハウがないなど)と、難病それ自体に関わるもの(安定した就業が困難など)がある。 ・前者は規模の大きい自治体、難病者職員がいる自治体で低く、組織力と経験蓄積で改善が可能であることがわかる。 ・一方後者は根本解決ができないため、状況改善には当事者理解に基づいた柔軟な就労制度を構築する必要がある。 ・しかし、公的機関の特性上、個人の事情に合わせた施策を独自に行うことは容易ではなく実現には法制度による国からの後押しが必須。 雇用側の問題は「雇用すること」によって自ずと解決に向かうが、難病自体に付随する問題には、障壁を除くために法改正などを伴う国からの強力なサポートが必要となる。 ###難病者・障害者の雇用により期待できること ・難病者雇用の有無別で比較すると、難病者がいる自治体では多様な特性の人に対するマネジメントノウハウの蓄積、休憩室やバリアフリーなど設備の充実、適した業務の創出、テレワーク導入などが進んでいる。⇒ノウハウが蓄積されていく ・難病者を雇用するにあたって、雇用実績のない自治体では「何ができないか」を確認しようとするのに対し、雇用している自治体では「難病の特性」と「何が得意か」を聞き取り、どう力を発揮してもらえるかを考えようとする姿勢がみられる。⇒福祉の対象ではなく戦力になる ・難病者がいない職場では難病に対する想像力が及ばず、不安から敬遠しがち。難病者が身近にいると適度な配慮ができるようになる。難病者も、雇用側の事情や考えを理解し、共によりよい働き方を模索することができる。⇒相互理解が進む 難病者や障害者があたりまえにいる職場では、試行錯誤の中でノウハウが蓄積され、相互理解が進み、能力が発揮できる環境が整っていく。~よりよい職場へと成長を遂げる。