Think Universal. × Human Library イベントレポート
Think Universal. × Human Library @渋谷100BANCHイベントレポート
2017年12月23日、渋谷100BANCH様にご協力いただき「THINK UNIVERSAL×HumanLibrary」と題したイベントを開催しました。両育わーるどスタッフであり当日HumanLibraryの本役もさせて頂きましたさきこが報告します。
知らない、を届ける
障害や難病・希少疾患に縁遠い人たちに、まずは知ってもらうところから始めようとスタートした「Think Universal.」。現在はThinkUnivesalポスターで「知る」の入口を、THINKBOXで「体験する」の入口をより多くの方へ届けるべく活動をしています。ポスターに関しては100種作成目標のうち、20種のポスターが完成し、大学や公共機関などで少しずつ掲示しています。
そしてThink Universal.とHuman Libraryがコラボレーションした今回のイベント。
ポスターモデルを主軸とした本役の方々とイベント参加者で実施するHuman Libraryを第一部に、ポスターモデルとその家族によるパネルディスカッションとの2部構成で行いました。年末の忙しい時期ではありましたが、満員御礼の賑やかであたたかい時間となりました。
Human Libraryとは
デンマークで行われたのが始まりの、障害者や社会的マイノリティーを抱える人に対する偏見を減らし、相互理解を深めることを目的とした試み。「人を本に見立てて読者に貸し出す図書館」という意味で、「読者(参加者)」と「本(障害者やマイノリティを持つ人)」が対話をするイベントのこと。※以下HumanLibraryをHLと記す。
今回はポスターモデルを始め、障害や疾患を抱える当事者、当事者家族が「本」となり全13タイトルが並びました。
見えない症状を語る難しさ
私も「摂食障害」の当事者として「本」を務めさせて頂きました。自分の症状について、公の場を介して他者に語るのは初めての経験でした。本役として話をさせてただく中で、見た目で分かりにくい症状を説明する難しさを改めて感じました。摂食障害の要因は対人関係などの心理的要因が大きいとされています。しかし、障害を持っていなくてもストレスが溜まれば食べ過ぎてしまう人もいる。
私は「一般と自分が違う」という自己認識はあっても
具体的にどこが違うのか
違うこと感じる苦しさは何なのか
「障害」に至るのは何故なのか。
など、端的に言語化できないのだと改めて気付きました。
HLの場では摂食障害のピーク時の症状や心理状態をお伝えしましたが、私自身もピーク時は過去の出来事になっている部分があり温度感が足りずに「大変だったんですね…」と読者(参加者)の実感を伴った発見に繋がりにくかったという感覚を覚えました。そして、どの様な伝え方をしていくのか、何を知って欲しいのか、考えようと思うキッカケとなりました。
対話するおもしろさ
HLは本役の方の自分語りが終わった後に読者からの感想や質問など、対話の時間があります。今回は特にこの対話の時間を大事にしたく考えてHLの本役の自分語りが終わった後に、読者が本役になる、読者の感想を語る、などの時間を作りました。そこで本役である私自身も読者の方から新しい発見をもらうことがありました。
〇「食」に関する困難さを抱える違う疾患を知ったり、「食べる」について他の人の考えを聞いたり。
同じ時代を生きていて、けれども世界の見え方は立場や状況によって異なる。
〇自分とは違う見方を知ることで自分一人で抱えていた悩みが軽くなったりする。
「そんな考え方があったのか!」と思わず手を打つ瞬間がある。
〇異なる中にも交わる部分を見つけて共感する。ああ、わかる!って笑いあえる。
対話する面白さ、対話から得る新しい気づき、対話することで得る親しみ感、それら全てが私にはとてもおもしろいと感じました。
知らないことを知る
何かを知ることによって感じる感情は人それぞれです。私の場合は「おもしろい」でしたが、必ずしもポジティブな感情だけではないかもしれません。しかし、どんな感情であれ外部からの刺激によって生まれたものは、自分の内面だけからでは生まれなかったものだと思います。停滞していた自分が動き出すきっかけになるのではとHuman Libraryの可能性を感じた瞬間でした。
カッコいいポスター
パネルディスカッションはポスターモデル2名とモデルのご家族1名、合わせて3名で行われました。自分の疾患を説明しやすくなった、誰にでも起こりうると知ってもらえるきっかけになれば等、それぞれの方のポスターに関するいくつかのエピソードや思いを伺えました。年齢も立場も異なる当事者の方々。そんな中で一貫していたことがあります。
それは「カッコいいポスターになった」と皆さん少し嬉しそうに仰っていたこと。
障害、難病、希少疾患というと、大変そう、辛そう、可哀想、など重たいイメージがついて回ります。そこを敢えてスタイリッシュなデザインで表現することで、見る人にインパクトを与え、「障害」よりも先に「カッコよさ」が目を惹くポスターに仕上がっていると思います。
メッセージ性よりも、アイキャッチ要素が強いこのポスターを、少なくとも今回パネラーとして参加された方々は好意的に捉えていると感じました。
そして「私達は障害や難病で苦しいので皆さんに知って欲しいんです、助けて欲しいんです」という切望するような気持ちではなく、「私はこういう特性を持ってるんですけど、こういうの知ってました?」という体温を持った投げかけがあるように感じました。同時に、その考えに至るまでの自身の障害や疾患との向き合い方を想像すると、その上で笑ってお話している姿を見て、ポスター以上にカッコいいと思いました。
マイノリティーはコミュニケーションツールになり得るのかもしれない
今回、イベントに参加して素直に楽しかったです。日常の中ではあまり対話する機会のない「マイノリティー」について、当事者とそうでない人が話し合う。知らないことを知ったり、困難さへの対応を一緒に考えたりする中で、日常で人と接する時よりも相手をしっかりと見て理解しようとする姿勢が自分の中で大きくなっている事に気付きました。
皆さんも日常の中では人と正面から向き合うより、その場全体の空気を読むことに重きが置かれがちだと思いませんか。
そつなく時間を過ごす。
大人になる程、そういう割合が増えていくのではないでしょうか。そんな中、今回のイベントのように「しっかりと相手と向き合う時間」はとても新鮮で貴重でした。相手と向き合うことで、当事者、参加者それぞれが自分自身ともう一度向き合う。
「マイノリティー」を軸にした新しいコミュニケーションの在り方が少し見えた気がしました。
text by さきこ