【230804】難病者の社会参加を考える議員勉強会 開催報告
*上記は当日の第一、二部と振り返りのアーカイブ動画です。
開催報告
第1回となる地方議員の皆さまと共に難病者の社会参加を考える議員勉強会。運営自体も議員さんグループと共催という、斬新な企画で始まりました。目黒区議会議員の田添麻友さんの司会進行のもと、3部構成で行われました。当日は、議員の皆さま二十数名にご参加いただき、出席がかなわない議員さんからアーカイブの希望も多く寄せられました。
最初の趣旨説明で、1.難病者の社会参加や制度をめぐる状況を知ってもらう、2.議員さんに具体的な打ち手を考えてもらう、3.難病に関する問題を議会で質問して認知度を向上させる、4.地方行政から難病者の就労・社会参加のロールモデルをつくる、という4つの目的が掲げられました。
医療や福祉ではなく「就労・社会参加」を求める主張は、人が生きていく上で欠かせないものは何なのか、ということを訴えかけられているようで、冒頭から参加者のみなさんの心をつかんだのではないかと思います。
第一部では、難病者の社会参加を考える研究会の重光喬之さんから、「難病の現状について」のお話がありました。丁寧な調査を様々に分析してまとめた資料はずっしりと重みがあり、時間内では足りないボリュームでしたが、制度の狭間に落ちてしまい光が当たることのなかった難病者のリアルを語る言葉の数々に、皆さんが集中して聞き入っている様子が伺えました。発表の中で、地方行政で実際に取り組んでいる事例が共有され、国よりも進んだ政策が地方で行われていることに着目して、地方議員さんに働きかけて行こう、と方針を決めたことは慧眼だと感心しました。困難が大きく壁が高いほど柔軟な発想が必要で、地方行政は住民に近い分、柔軟性が高いのだと気づかせていただきました。
第二部では、「議会質問の事例共有」ということで、焼津市議会議員の秋山博子さん、袖ケ浦市議会議員の伊東あきらさんよりお話いただきました。
秋山さんからは、難病者の問題に取り組むようになったきっかけが、身近に難病当事者がいたこと、難病者家族から相談を受けた経験から難病者の社会参加を考える研究会につながり、難病者に特化した就労支援について議会で質問してみようとはじめの一歩を踏み出したことが語られました。「はじめの一歩」があったことで、問題が顕在化し、考えるきっかけになります。一般質問の項目は、(1)現状について(2)採用と勤務について(3)障碍者福祉計画(2023年度中策定)について、であり、それぞれの項目の詳しい説明がありました。
次に、伊東さんより、2回の議会質問についてお話頂きました。内容は1回目は(1)市の障害者・難病者に対する就労支援について(2)市役所の障害者雇用の状況について、2回目は(1)市の障害者・難病者の現状について(2)「第7期障害福祉計画」の作成にあたり難病当事者たちの声を尊重していかないかという提案、になります。ここからどんな答えを行政から引き出したのか、興味深く拝聴しました。
お二人の議員さんのお話は、是非アーカイブでご覧いただきたいのですが、議会での質問から調査が始まり政策が動いていくダイナミズムを感じました。地方政治は面白いです。
質疑応答の後、第三部は5つに分かれてグループディスカッションを行いました。お題は3つ、Q1.難病当事者は、就労・社会参加にどんなハードルがあると思うか、Q2.議員として、難病の当事者の就労・社会参加に何ができると思うか、Q3.難病者の就労・社会参加の機会を増やすために、まず自治体内の何を調べればいいと思いますか。調べたうえで何をしますか、でした。議員さんのディスカッションは初めて聞きましたが、話慣れていらっしゃるので、わかりやすく聞きやすかったです。しかし、話すことと同じかそれ以上に聴くことが仕事であるということが、みなさんのお話の中からよくわかり、社会の中で議会の果たす役割の重みを感じました。
ディスカッションの後、それを全体で共有して終わりましたが、様々な観点から意見が出され、大勢で考え話し合うことが政治の原点なのだということがよく分かりました。共通して言えるのは、当事者の声を聴くこと、そしてそれを人に伝えることから政策は始まるのだということです。難病の問題を解きほぐして制度に落とし込む過程は、各自治体によって違ってきますが、「人が生きることを支える」のが政治だということは共通しています。地方が取り組むことで社会の理解が深まり、制度の整備が進むことを期待したいと思います。
(当日スタッフ 井上恵子)
こちらは第三部のグループディスカッションの要約・抜粋です。
イベント概要
「難病」についてご存知ですか?
「難病」についての質問、議事録にありますか?
この度、難病について知ってほしい!ということで勉強会を始めます。地方議会でできること、特に難病の方々が目指している『働く』という社会参加について考え、それぞれの議会で行動するきっかけにしたいと思っています。
簡単な概要となりますが、難病を抱える人は、日本に 700 万人以上いると推定されています。この人数は、障害者手帳保有者 727 万人(平成 30 年度福祉行政報告例及び衛生行政報告例より)とほぼ同数に相当します。 難病者は皆、終わりの見えない治療と日常生活の両立、学校や職場での人間関係、生活費や医療費に充てる収入、恋愛や結婚などに困難や悩みを抱えています。
障害や指定難病でもまだ支援が足りない状況ですが、「難病」については国の制度の狭間で支援が進まないだけでなく、当事者が声を挙げられる状態にない、問題が知られていない、などの理由でこれまで地方議会でもテーマに掲げる人が少ない現状があります。国の制度がないからこそ、自治体の出番です!また、厚生労働省は「障害福祉計画及び障害児福祉計画を定めるに当たっての基本的な方針」の中で、「障害者総合支援法に基づく難病患者への支援の明確化」を打ち出していることから、今後の計画改訂で「難病」への対応を自治体が行なっているかを議会でチェックすることも必要です。
難病への基本的な知識、そして議会でできることをお伝えしつつ、一緒に考えていく時間も設けています。
勉強会への参加、お待ちしています。
*本勉強会では医療・福祉基盤ではなく、就労・社会参加をテーマとしています
■対象者
・全国市区町村・都道府県の現職議員
・議員経験者
・議員インターン
■運営
・主催:難病者の社会参加を考える研究会
・共催:パブリック・ラボ、ひろしま議員女子会、女性議員を増やす会 なないろの風
■開催時期
2023年8月4日(金)20:00〜21:30
■実施形態
・オンライン(Zoom)
・アーカイブ録画配信
◾️プログラム
1、難病の現状について(20分)
重光喬之(難病者の社会参加を考える研究会)
2、議会質問の共有(15分)
秋山博子(焼津市議会議員)、伊東あきら(袖ケ浦市議会議員)
3、グループディスカッション
お申込みはこちら(外部サイト)
<登壇者紹介>
重光喬之(しげみつたかゆき) NPO法人両育わーるど 理事長、多摩大学大学院医療・介護ソリューション研究所 フェロー。20代半ばに脳脊髄液減少症を発症。民間企業2社、福祉施設の運営や地方自治体での障害者自立支援協議員などを経て、2018年に難病者の社会参加を考える研究会を立ち上げる。好きなものはSF小説と4つ打ち、持病の疼痛で円形脱毛症とせっかちさに拍車が掛かる。
秋山博子(あきやまひろこ) 2011年から静岡県焼津市議会議員(現在4期目)。無所属無党派の市民派議員として「女性議員を増やす会 なないろの風」「全国自治体議員行財政自主研究会」「焼津流、平和の作り方」「多文化共生社会を考える焼津市民の会いちご」「リニア焼津」などに参加、活動中。
伊東あきら(いとうあきら) 袖ケ浦市議会議員(1期目)仙台市出身、1968年2月6日生。議員になる前の職業は某通信会社。2017年に縁があって袖ケ浦市へ移住。アクアライン・自然・人間性等、可能性を求め地元の支援を受けながら2020年に初当選。スローガンは”住みやすさ日本一の街”。誰もが輝ける社会を目指し議員活動中。