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難病者の社会参加を考える議員勉強会 開催報告

【開催概要】
日時:2025年1月23日(木)16:20~18:00
実施形態:オンライン(Zoom)
対象:全国市区町村・都道府県の現職議員、議員経験者、議員インターン
主催:難病者の社会参加を考える研究会
目的:本勉強会は、難病者の社会参加や就労支援の課題について議員の皆様に理解を深めていただくとともに、地域における先進事例や実践的な施策を共有し、ネットワークの構築や、地域ごとに効果的な施策を検討するきっかけを提供することを目的としています。
参加者:22名(内地方議員11名)
主催:難病者の社会参加を考える研究会
共催:パブリック・ラボ、ひろしま議員女子会、女性議員を増やす会なないろの風
公認:RDD両育わーるど – Rare Disease Day in Japan 2025

【プログラム】
開催挨拶16:20~
第一部:講演および情報提供16:25~17:25
山梨県議会 藤本好彦 議員「山梨県庁における難病者枠の雇用事例紹介」
荒川区議会 夏目亜季 議員「荒川区から国へのアプローチ」
目黒区議会 たぞえ麻友 議員「地方行政からの就労アプローチの試行錯誤」
就労支援員 名和杏子「難病者の就労支援の現状」
質疑応答
第二部:パネルディスカッション17:25~17:55 
登壇者4名「 地域における難病者の社会参加促進策について意見交換」
質疑応答
閉会挨拶~18:00

【講演内容】
第一部 講演および情報提供
山梨県議会議員 藤本好彦 氏「山梨県庁における難病者枠の雇用事例紹介」
令和6年度山梨県職員採用試験に難病患者枠を全国で初めて設定、そのきっかけとなった藤本氏の議会質問の動機、議会質問後わずか4カ月で県から発表があるまでのやり取り・報道、発表後の反響、難病患者枠3名の入職後の定着支援について3月に議会質問予定、ご専門である第一次産業政策と難病者の就労問題取り組みへの想い等についてお話を伺った。

荒川区議会議員 夏目亜季 氏「荒川区から国へのアプローチ」
難病当事者としての自己紹介、ヘルプマーク普及活動、難病患者通院費助成制度(区外の専門医へ通院する方が多い)、区公共施設入場無料の難病者への拡充、「難病患者の社会参加及び就労機会の拡充を求める意見書」を国宛に全会派一致で提出、難病者雇用への取り組み、難病者の社会参加には理解と支援の両輪が必要、等のお話をいただいた。

目黒区議会議員 たぞえ麻友 氏「地方行政からの就労アプローチの試行錯誤」
難病に関する議会質問を2回実施、1回目は、指定難病と難病の違いを指摘、難病の多さと支援制度の少なさ、そこから難病カフェがスタート(4回実施):音楽療法と自己紹介・体操・プチ講座など、安全な場所であることが大切、2回目は、担当課で悩み障害者雇用を入口に、法が未整備の部分こそ自治体が埋めるべき、法定雇用率の時短カウント、障害者サポートスタッフ2名をトライアルで雇用の公表、同じ目黒区にある東大先端研の超短時間雇用研究を一緒に取り組むよう提案、等のお話を伺った。

難病当事者/就労支援員 名和杏子 氏「難病者の就労支援の現状」
難病当事者・就労支援員・研究会スタッフとしての自己紹介、17年入退院を繰り返し薬を換えて寛解、就労移行支援事業所を経て社会復帰、就労支援員に、制度・支援があることの有難みを痛感、制度・支援にかからない難病者の存在、雇用促進法の対象の広がり、就労支援の概要、両立支援について、疲れやすさ・体調の変動・集中力活力の低下・免疫力の低下等難病者の症状は様々、難病者の就労支援は障害者の支援と大きくは変わらない、雇用促進法以外の難病者の雇用拡大、雇用率が上がるなかで企業の関心はそちらへ向きがち、訓練・実習の機会が必要、サービスの対象として障害者だけではなく難病の併記を増やして欲しい、雇用助成金も難病者が漏れている、採用の間口を広げるアクションを、私たちに武器を与えて欲しい、労働人口減少の時代に障害者も支える側になり得る、自分のように潜伏している難病者が多く存在する、等のお話をいただいた。

第二部 パネルディスカッション
「 地域における難病者の社会参加促進策について」というテーマで、第一部にお話いただいた、藤本議員、夏目議員、たぞえ議員、名和氏の4名にてディスカッションを行った。
公務員の雇用形態として超短時間雇用は難しいのか?、障害者手帳の持てない難病者は就職活動で苦労する、企業にとってもプラスがないと前に進まない、前例のないことに最初の一歩が踏み出せない、難病者自身もトリセツ等を作って売り込んでいくことが必要、働けることを伝える、”山梨方式”の横展開に期待、等について話し合われた。

質疑応答では、参加者の方から、難病の方は医療的知識がないと難しいと思われてしまう、難病の人が医療だけでなく就労したいというところまで認識が追いついていない、まずは知ってもらうこと、誰にでも起こり得ること、少しの支援があれば働ける方が大勢いる、障害者手帳のない方の実習の機会はあるのか、手帳の有無(法定雇用率に含まれない難病者)をどうやって乗り越えていくか、等のご質問・ご意見が交わされた。

議員勉強会

<勉強会の感想>
3名の議員の方々から先行事例を伺い、その熱意に深く感銘を受けました。どの分野においても、熱心に取り組む方がいなければ道は切り拓かれません。こうした方々が活動されていることに心強さを感じました。
一方で、公的機関における難病者の採用やショートタイムワークの導入については、「不可能ではないものの、公務員は民間企業とは異なり、地方公務員法や人事院規則に基づく規定が適用されるため、制度の理解が不可欠である」との課題が浮かび上がりました。こうした法制度を十分に把握していなければ、具体的な突破口を見出すことは難しいと感じました。
今回の議論をさらに深めるためには、すでにショートタイムワークやフレックスタイム制を導入している自治体の担当者や、公務員の働き方改革を研究している専門家の方々にもご参加いただき、より実践的な検討を進める機会があるとよいのではと思いました。(スタッフN)

・公務員は公平性を担保するために、採用にあたって良くも悪くも国家・地方公務員法に縛られています。そのため、常に、「法律が、人事委員会が・・・」と言う言い訳がされてきています。そのような中で、山梨県の難病う者の正規職員としての採用は、画期的で、法律が無くてもできる、法に違反しているものではないということを多くの人たちに気づかせてくれました。法律はすべてが整ってから、できるものではなく、世の中の一定以上が変化した時にできるものがほとんどです。地方議会から、地方行政からの変化により、法律が変わるという本来の仕組みが動きはじめるような気がした勉強会でした。議員の方々と当事者団体とで地に足の着いた議論が今後も出来そうで、期待一杯です。(スタッフY)

                                         

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