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【231120開催報告】THINK DIVERSITY~知らないを想像する~

両育わーるどでは、難病や障害と社会との接点を増やすための取り組みの一つとして、ワークショップやヒューマンライブラリーを行っています。
今回、私は、難病当事者として、オンラインのワークショップに参加しました。

日本では、9人に1人の割合で、難病や障害のある人がいると言われています。
しかしながら、そうした方と実際に話したことがある方は少ないのではないでしょうか?
また、難病や障害がある方が職場にいることは知っていたとしても「病気や障害のことは本人に聞きにくい」と感じる方も多いかもしれません。
障害や難病のある人には、治療を受ける「患者」という一面もありますが、そうでない人と同様に日々の生活があります。

今回のイベントでは、難病当事者の日常や立場を想像し相互理解を深めることを目的とし「難病を抱える人がもし自分の職場で働く仲間だったら…」と想像しながらグループワークを行いました。

イベント内容詳細

グループワークでは、4名の難病当事者の事前情報(※表1を参照)をもとに、それぞれのグループに分かれた参加者の方に次のことについて、考えていただきました。

  • 当事者が働くことの意義
  • 働く上での困りごと
  • 誰もが働きやすい環境とはどのようなものか

その後、難病者本人が登場し、当事者としての思いを語ったり、双方の理解を深めたりする時間となりました。

表1は、事前情報をもとに行われたディスカッション内容(上段)と同じ内容について当事者本人が記載した「本人の思い」(下段)の要約・抜粋です。

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問1
この人にとって働くことの意味や意義はなんだと思いますか?
問2
この人は働く上で、何に困っていると思いますか?
問3
この人が同じ職場に加わるとして、あなたが考える「誰もが働きやすい環境」とはどのようなものでしょうか?
グループA
ギラン・バレー症候群。
症状:常に強い倦怠感。体力がなく、必要最低限の行動でも疲れで脱力することがある。疲れやすく回復しにくい。 顔面神経麻痺、手足の力が弱い(握力3~4)、手足の震え、湿疹、頭痛、複視、光に極端に弱い。
・生活のため、病院費。本質的なところはみんな同じ。
・自己肯定感、自立したい。⇒病気の有無関係なく
(自身と似た感じの方の意見で)病気の有無だけではなく、人間として同じ理由。人として当然の欲求。
・体力がない⇒やっていけるかの不安、他者への迷惑をかけるかも。(薬でコントロールが出来るか)体調のコントロールが出来るか。
・見た目が、他者(健常者)と変わらないけれど、実際の苦しみが伝わらない
・お互いを知ること。
・会社に余裕があること(資金面で)、利益がある会社。
(障がいのある方で権利を主張する方の権利を守れる)。
・現場に余裕がないと(人的余裕)障がいのある方をフォローできない。←心の余裕につながる
Aさん・社会の一員と感じられること
・自分の活動のための費用捻出
・固定の活動時間を設けることで、自身の体調や出来る出来ないを自らが認知する
・その日の朝にならないと体調がわからず、日によって出来ることが変わる
・倦怠感は誰しもが感じるものであるため、生活に支障が出るレベルと認識してもらいにくい
・当たり前にできると思われる作業が出来ず、人に頼らなければ進まない
・各自の得意なことを活かせる環境
・勤務時間・勤務日の融通がきく
・あたりまえに出来ることが出来ない人もいるという理解がある
グループB
クローン病(慢性疾患)
症状:活動期には腹痛、下血・下痢で脱水と栄養不足で体重減。トイレには1日20回以上排泄。ストーマ造設。寛解期には主に免疫抑制剤で維持。疲労蓄積。食事:低残さ・低脂肪の食事と経腸栄養材。水分補給。
・働き「続ける」ことそのものに意義があるのだと思う。
・皆と一緒の時間を共有する。
・社会参加(人との繋がりを持つ)色んな働き方や存在の仕方があるというのを知って欲しいのでは?(理解啓発)
・疾患を知らない人からサボっていると誤解される。
・トイレの設備や行ける環境が整っていないと困ると思う。
・時間や身体的な拘束が生じる働き方が選択肢として難しい。
・体力的に通勤が辛いかもしれない。
・職場で多様性についてのポジティブな理解がある。理解があるからこそ自然な(無理のない)配慮につながる。
・採用の段階で特性を売りに出来るくらいカミングアウトして、理解を得られている。
・win-winの関係性。障害のあるなしに関わらず、先入観なく、お互いの良いところを引き出しあえる環境。
Bさん・子供の学費や家庭維持のために収入確保 
・自分の趣味、そして現在・次世代が暮しやすい社会活動等の活動資金を得る。
・働くことで誰かの役に立っている実感(自分がやりたい仕事ではないかもしれないが)
・疾患と短腸によりトイレに駆け込む回数が多く、離席が多くなる。
・職場の会席等では食事内容によっては参加できないことがあり、交流の機会が無くなる
・1日の勤務でかなり疲労し、帰宅後はぐったり寝落ちしてしまう
・障害者雇用枠専門以外の簡単な作業を充てられる。
・「仕事さえ充てとけばいいだろう」ではなく、障害のある人もそうでない人もチームで取り組む風土がある。特に直属の上長に病気の理解がある。 
・互いの得手不得手を認識・理解し、補完できるような職場環境。
・各人仕事がパンパンで、他人の事は気にしてられない雰囲気では、お互いに協力し合うことがなくなってしまうので、ゆとりある職場作り。
グループC
発達障害(自閉スペクトラム症、ADHD)・双極性障害Ⅱ型。
症状:得意分野と苦手分野の能力の差が激しい。精神的な上がり下がり(軽躁とうつ)の波が大きい。初めての場面や初めての人に対する不安が強い。
・社会への参加。つながり。
・自分が求められている実感。役立っている感覚。生きているという実感。
・働くことで職場の方とつながる(得たお金を使うことも社会とのつながりや生きている実感)
・周りから想像できない、見えない症状。説明をするのが難しい。
・言いたいことを躊躇することのストレス。
・ADHDの方が実施に遠慮がある。
・気分の浮き沈みが仕事のタスクをこなすのが大変では?(集中できないとか)
・話しかけてあげる。「調子どう?」から。この方のストレスにならない環境にする(予期せぬことの少ない仕事)
・配慮しすぎもその人のためにならない? 
・気を使いすぎるのも・・・皆と同じ対応「おはよう」。
・「お互い様」ができる雰囲気。
・仕事の内容を具体的に聞くことで安心している例。雑談できる
Cさん・社会への貢献や収入を得るなどができていることによる自分への肯定感。
・生きていることへの罪悪感の解消。
・収入の確保。
・多少なりとも誰にでもある症状ゆえに甘えだと捉えられ、辛さを理解してもらうのが難しい(苦手なことに対する負担感など)。
・うつ状態だと、ミスが増えたり仕事が捗らなかったり周囲への影響が大きくなる。
・苦手をフォローし得意を生かすことができる適材適所。
・フォローし合える関係性。
・お互いがお互いを知ろうという気持ちでの歩み寄り。
グループD
慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎)
症状:脱力感、疲労感、筋力低下、集中力思考力低下(高次脳機能障害)、睡眠障害、全身の痛み、感覚過敏など。少し動くと症状が悪化する、休息が多く必要、無理に仕事を続けると体を動かすことが何日にもわたって困難に。
・疲労感が強いと外に出るのも大変だろうけど、外の世界と繋がる意味ではないかと想像した
・当事者の中には、人から何かをして貰っているという受け身の状態になりがたいだが、社会の中での、居場所、ポジションをもつこと
・収入を得る。(納税者である)
・自分でできることを残したい、生きがい…。
・自分のやらないといけない時間に動けないことがある
・時間と場所に制約がある。それによって仕事の選択肢も狭まる
・今ある仕事に合わせる困難さがある
・既存の働き方や仕事とマッチしづらい
・コミュニケーションを取りにくかったり、遠慮してしまうかも?
できない所をやってもらっている…
・上記を、無理して隠して、自分の体調に跳ね返ってくる
・働けている喜びと責任感があり、その分自分の体調が疎かになる。
・周囲は辛さを、分かることがほぼできない。働く上での思い込み?的な常識が邪魔をする。8時間の必要があるか?
・コミュニケーション量を担保できる仕組み
・体系化されたものであれば抜けてもフォローできるが、専門的で代わりが効かない仕事を任せる難しさ
→周りがその人の水準に合わせれるか。決められた納期でないといけないのか?
Dさん・社会貢献(出来ることが少ないと感じながらも誰かの役に立つことができる)
・お金を稼ぐこと(自分のやりたいことの実現、家族への貢献)
・継続して働くこと、自分の体調の把握(気づかないうちに、つい無理をしがち)・労働時間や休憩時間を個人の状況にあわせて決められる環境

参加者の声

グループディスカッションにおいて、進行を務めた2人のファシリテーターからは、以下のような感想がありました。

私は自身が難病当事者ということもあり、そうでない方々からの反応というのは、非常に貴重な学びとなりました。また、参加者の立場や視点が変わると、個々の受容プロセスも異なるという点が、個人的に大きな気づきとなりました。
障害や難病を超えて、自然と対話する機会を提供する、という点においても、改めてプログラムの意義を感じます。
本開催に向けて、さらなるブラッシュアップを目指して行けたらと思います。

初参加ながらファシリテーターを務めさせていただきました。
難病だからとか、病気だからとかではなく、そもそも仲間として互いに興味を持ち、知り合い、つながることで、結果としてより良い成果が出せるチームなるということを、同じグループの皆さんと合意形成ができたと考えています。
このように、みなさんがお話しできる場はとても重要だと感じていました。

イベントを振り返って

私自身は発表者としての参加でしたが、対話の重要性を改めて感じる機会となりました。
難病者もそうでない人も、それぞれに悩んできたことや苦労してきたことがあり、同じ人間として、働く上での悩みには共通する部分も多いことを実感しました。

今回のような対話の機会を増やすことにより、難病者に限らず、様々なバックグラウンドを持つ人が働きやすくなるよう、私も活動に関わっていきたいと思います。

今回ご参加くださった皆様には、心より御礼申し上げます。
両育わーるどでは、難病や障害と社会との接点を増やすための取り組みを行っていきますので、今後とも応援宜しくお願い致します。

社会人スタッフ 近藤 菜津紀