「自閉症カンファレンス NIPPON 2014」参加報告 1日目
「自閉症カンファレンス NIPPON 2014」参加報告1日目
2014年8月23日から24日まで、早稲田大学で開催されている「自閉症カンファレンス NIPPON 2014」に参加してきました。このカンフェレンスは、アメリカのノースカロライナ大学医学部精神科TEACCH部を中心にして、ノースカロライナ州全域で行われている自閉症スペクトラム障害(ASD)の療育ための援助プログラムの最新の研究や動向についてのものです。
TEACCHを研究している日本の学者や、それを実践している施設の専門家。そして、ASDを抱えている当事者並びにその保護者等も含め、会場を埋め尽くす1000人ぐらいの参加者がありました。大学の一番大きな会場でも空席なしで、入れなかった人は別室の中継画面で見ていたようです。書籍販売場に至っては、身動きができないぐらいの人の行列。これほどまでの人が集まるぐらい、日本でもASDとその対策としてのTEACCHに注目しているということなのでしょう。
開催責任者の川崎医療福祉大学特任教授・佐々木正美氏が冒頭に、「ASDの人を「治す」という視点ではなく、彼らを取り巻く周りの「私たち」がどう変わるか」という視点をもって取り組むべき、という考え方は共感できました。
TEACCHプログラム(ASDの療育法のひとつ)の発祥地アメリカのノースカロライナ(NC)からのゲストによる講義が続きました。まずは「高機能自閉症・アスペルガーの人への高等教育(大学)での支援」について。
学習面のみならず、様々な対人関係作りが求められる大学生活の中で、自分がASDであることを発信することさえ難しい彼らを、法律や規則を超えて周りの学生がサポートする「Best Buddies」という取り組みがアメリカにはあるそうです。大学生が1-2年生時に、地域のASDの人々や同じ大学の学生の、生活サポートや交流をペアになって推進するもの。日本にはまだ広まっていないらしい。
中等教育までは個別療育プランに沿ってサポートされる反面、大学になると自分で言い出さない限り、様々な配慮は一切されていないのが現実。日本もきっとそうかもしれません。ASDの人々が「自分から切り出す」ことを大の苦手としている背景を理解せずに、「制度だけはあるよ」と法的根拠だけを示して実践的なサポートに動き出さないのは、アメリカも日本も同じなのかもしれません。
しかし何よりも驚いたのは、ASDとされる人の33%が、小さなコミュニティ大学も含めた高等教育になんらかの形(オンラインや、短期だけでも)で在籍しているとのこと。無事に卒業できたかどうかのデータはないものの、希望はあるなと思いました。日本の現状はどうなのでしょう?
次に参加したセッションは「ASD(自閉症)の子供に社会的なかかわりを教える」について
幼少期のASDの子供に対しては、その子供と家族が一緒になって「共同療育者」として成長できるように、周りがサポートすることを指摘されていました。まさに家族ぐるみの寮育ではなく、ASDに関わる人みんなの「両育」ですね。それぞれの子供の学習スタイルにあった形で、家具や教材を構造化(個別化・最適化)し、何よりも家族が共に肯定的な関係を築けるようにサポートすることの重要性を何度も繰り返していました。
初日の最後に参加したセッションは「ASDの人の生涯を通した社会へのかかわり」。
「人とのかかわり」は人によって大きく定義は異なるものの、大事なのは人とのコミュニケーションをとるためのスキルを伸ばすだけではなく、お互いに関わるその「環境・場」を提供すること。そして、ASDの人たちが他者とのかかわりを持ちやすいようにするための視覚的な支援をすること(事前にイベント計画をビジュアルに伝えたり)、その人の興味関心に沿った活動の計画を立てること、そして一人でできることを徐々に二人でやったり、地域の人たちと定期的なかかわりをゆるーく継続的に持っていくこと、などが紹介されました。
ということで、三つのセッションそれぞれに共通していたテーマは「かかわり」ということ。そして、それらを今回は特にアメリカの文化らしく、ちゃんと「戦略的」に考えてASDの人々の「生涯」をトータルで捉え、のびのびと一緒に地域で生きるための方策が議論された、といった感じです。
ASD支援の細かい研究内容についてはポスター発表等がありましたが、とにかく人が多くてじっくり見て話を聞くこともできませんでした。でも、両育わーるどが関わっていくべき人たちがこんなにたくさんいるのかと思うと、逆にワクワクもしました。
14/8/23 自閉症カンファレンス2014
text by 森田(両育わーるど 理事)
独立行政法人福祉医療機構 社会福祉振興助成事業