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さっきできなかったことが少しできるようになる。その積み重ねが未来の自立に繋がる。

さっきできなかったことが
少しできるようになる
その積み重ねが
未来の自立につながる

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今回お話を伺った仲詩織さんは、現役の大学生です。もともと福祉に興味があり、大学では臨床心理学を専攻。発達障害児のボランティアに参加した経験もあり、専門的に学んでいるからこそ見えてくるビジョンがありました。

課題や反省点があっても、喜びの大きいボランティア活動

今日体験したボランティア内容を教えてください。
「みんなでハイキングへ行って、そのあとはイチゴ狩りというスケジュールでした。参加する子どもの障害の程度に合わせてハイキングコースは、片道30分ぐらいの比較的歩きやすいコースでした。私が担当したのは、まゆちゃんという小学6年生の女の子です。やや障害が重く、言葉はうまく発することができませんでした」。

接してみてどうでしたか?
「まゆちゃんは、足も不自由で、うまく歩けません。着目を続けることも難しいため、歩いていても足元がおろそかになってしまうこともありました。“足元を見てね”と声をかけてもチラっと見て、また視線が動いてしまう。人の動きが気になるので、ハイキング中に人とすれ違うと、その人をジーっと見たまま歩いてしまうので危ない。声がけをして諭しても、なかなか集中できませんでした」。

印象に残ったことはありますか?
「ハイキングが終わって電車で帰ってくる途中、電車を降りる際に乗降客とぶつかり、まゆちゃんがホームと電車の隙間をうまくまたげなくて、片足が落ちそうになってしまったんです。人が多かったのもありましたが、私の注意不足で……。ちょっとした気の緩みが、こういう大事につながってしまうんだなと実感しました。指導員の方から“安全に、注意して活動してほしい”と言われて、自分なりに気をつけてはいたんですが。そこは反省点です。
彼女は歩くことも不自由だと聞いていたので、付きっきりで側にいないと危ないのかな?と思っていたんです。それでハイキングも近くにいて、下りは歩くスピードも出て危ないと思ったので、ずっと側にいたんですが、施設に戻る途中指導員の方に“まゆちゃんは自分でも歩けるよ”と言われたんです。過保護すぎたかな? と思うところもあったので、少し離れてみたら、思っていた以上に歩いていました。もっと彼女の能力に合わせた対応をしてもよかったのかなと実感しました」。

さじ加減が難しそうですね。チャレンジさせれば、できてくるものですか?
「障害の程度や本人の適性もあるとは思いますが、その子ができそうだけれどちょっと難しいことを毎日ちょっとずつルーティンにして、徐々に練習してレベルを上げていけば、すぐには無理でもいつかはできると思います」。

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障害児も、ボランティア参加者の表現スキルも成長できる場所

仲さんは大学の実習や個人でもボランティアを経験されていると聞きました。今回のボランティアに参加して、他との違いを感じましたか?
「他では“参加していただく方に楽しんでもらえればOK”というスタンスが多いかもしれません。一緒にイベントに参加したり、準備のお手伝いなどを担当しました。でも、今回のボランティアは参加者の自主性が求められました。未経験者向けに事前説明会もあるので心配はいりませんが、求められるレベルは高いと思いました」。

6時間集中して障害児の側にいるのは、ボランティア未経験だとちょっと大変そうに感じます。
「確かにそうかもしれません。ハイキングの途中で足が止まってしまうので、すぐ側で“行くよー”と100回ぐらいは声がけをしました(笑)。でも、最後の方になると遠くから“行くよー”と声がけすればすぐに私のところへ来てくれて、短い時間でも彼女なりの成長がちゃんとあるんです。できなかったことができてくると嬉しいです。ちょっとした成長を感じられると、“あの子伸びたね”とスタッフで話しています」。

障害児の成長を見るのが、仲さんの喜びでもあるんですね。
「そうですね、障害児の自立を支援したいんです。というのも、ボランティア先で、障害児の親御さんたちが“自分が亡くなったあと、子どものことが心配” というお話をよく聞きます。親御さんもいつかはいなくなります。ずっと甘えてはいられないですよね。施設内ならそれでもいいですが、社会に出て、地域で生きて行くためには、自立しないといけません。障害者自身の高齢化問題もあります。知的障害者の大人が、なにかを覚えたりするのは子どもより難しいので、子どもの頃から一人でも生きていけるように、少しでも自分でできることを増やすようにしたいなと思っています。子ども時代なら私にもなにかお手伝いできることがあるかなと。成功体験を積んで、自信がつけば、いろんなことをやってみようという気にもなると思うんです」。

naka_140322_3両育わーるどでは、ボランティアに参加した人にも学びがあるのではと考えています。仲さんがボランティア活動で得たものはありますか? 
「障害児とオーバーアクションで接していると、反応がいいんです。大げさに表現すると子どもたちに伝わりやすいんですよね。私は凄く人見知りなんですが、ボランティアを通じて表現力が豊かになったと思います。最初のころはボランティアをしているときだけオーバーで、終わったら普段の自分に戻っていました。でも、最近は切れ目なくボランティアをやっているので、普段の生活でも心をこめて“ありがとう”と笑顔で言えるようになりました。これはボランティアをはじめてから、自分に起こった変化ですね。ニコニコして接すると、相手もフレンドリーに返してくれる。普通の生活に必要なことが、ボランティアから得られるような気がします。障害者が相手だからとか、健常者だからとか関係ないですよね」。

 

 

2014/3/22 多摩丘陵ハイキングとイチゴ狩り
2014/4/9 Text:四街道ふみ