ゲームで楽しく障害理解やスキルアップ!第一回両育イベントレポート!
ゲームで楽しく障害理解やスキルアップ!第一回両育イベントレポート!
2016年4月に行われた第一回両育イベント「アナログゲームでコミュニケーション」。アナログゲームを使った療育を手がけるパイオニアである松本太一さんをお迎えし、開催しました。
アナログゲームとは、コンピュータを使わないカードゲームやボードゲームのこと。馴染みがあるものとしては、トランプやオセロ、人生ゲームなどがあります。子供から大人まで楽しめるゲームということもあって、実は密かなブームが来ており、都内にはアナログゲームカフェなどもあるそうです。松本さんは、このアナログゲームを活用し、障害者のコミュニケーション能力を向上させることができるのではないかと提唱されています。
本当にゲームで療育ができるのか?
始まる前は正直いって懐疑的でした。私自身が小学5年生のときに、ゲームに勝ちたいがために、障害がある友人をゲームの仲間外れにしてしまったことがあるからです。ゲームには勝ち負けがあります。その駆け引きによって、子どもたちが人を信用できなくなったり、素直になれなくなったりしてしまうのではないかと感じていました。
イベント当日は、松本さんが持ってきて下さったたくさんのゲームを体験しました。カードゲームから人形を使ったゲームなど、カラフルな色と可愛らしい絵が使われたゲームの数々は、見ているだけでも気持ちが明るくなりました。そして、何といっても楽しい!初対面の方がほとんどで、当事者、福祉現場の職員、学生など、属性も年齢もバラバラでしたが、笑い声が絶えませんでした。あっという間に時間が過ぎてしまいました。もちろん、楽しかっただけではありません。ゲームを通じて気づいたことがたくさんありました。
「できない」「負ける」を知ることも重要
まずは、「ゲームを通じて子供たちのつまずいているポイントへのフォローのアイデアが見つかる」ということです。例えば、カルタを想像していただけると分かりやすいかもしれませんが、数を数えることが難しい子にとって「カードをたくさん取った人が勝ち」と言われても、なかなか理解できないことがあります。もし、一人ひとりがとったカードを横に並べて、視覚的に比較したならば、誰が勝ったのか認識できるかもしれません。ゲームを通じて、その子供がどんな課題を持っているのか、どんな配慮・工夫が適しているかを知る手がかりになります。
ふたつめは、「気持ちのセルフコントロールを学べる」ということです。ゲームのなかでは、失敗したり、自分にとって都合の悪い展開になったりすることがあります。そんなときに、我慢したり、友達に譲ったりすることが求められます。社会に出ると、自分の思い通りにならないこともたくさんあります。友だちと一緒にゲームをすることで、自分の気持ちをコントロールし、折り合いをつけていくことが学べるのではないかと感じました。
みんなで楽しめる方法をみんなで考える
参加者からは、「障害児だけではなく、健常児と一緒にできるところがいい」「ツールを使うことでコミュニケーションを深めるやり方をもっと探りたい」という声を頂きました。「アナログゲーム」を媒介として、障害者も健常者も混ざり合って楽しみながら、周りの人のことを理解できるのではないか、学び合うことができるのではないか、と多くの方が感じてくださったようでした。当日は、特例子会社で働く当事者の方も参加していたのですが、普段は初対面の方とのやりとりがあまり得意ではないと話していたにも関わらず、楽しそうに交流しているのが印象的でした。
「ゲームに勝ちたい」という気持ちはゲームを楽しんでいる全員が大なり小なり抱いているものですが、その状況下で、みんなで楽しく遊ぶためにどうしたらいいのか考えることが両育につながるのではないかと感じました。私自身、冒頭にお伝えしたように、アナログゲームを使った療育に懐疑的でしたが、それは「障害を持っている友達が不利になるようなゲーム」をやっていたからかもしれません。このイベントを経験した今は、あの友達と楽しい時間が過ごせるのではないかと思います。
「アナログゲーム」を体験してみて、相手を理解することの大切さ、対人関係を築く上でのセルフコントロールの重要さを改めて感じるなど、たくさんの学びがありました。両育わーるどでは、今後もこのようなイベントを定期的に開催していきたいと考えています。「色々な方に両育を知って頂きたい!」「堅苦しい福祉のイメージを壊すようなイベントを行い、福祉に関わるきっかけを増やしたい!」そんな想いで企画していきますので、皆さんのご参加をお待ちしています!自分とは、関係なさそうなテーマだと思っても、実際に参加してみると、思わぬ楽しみやつながりを感じることができるかもしれません。
松本太一さん紹介文
”東京学芸大学大学院障害児教育専攻卒業、障害児教育学修士
在学中は自閉症児療育の「太田ステージ」開発者である太田昌孝の指導のもと、東大付属病院や通級指導教室でソーシャル・スキル・トレーニングの実践研究を行う。卒業後は、福祉団体や人材紹介会社で成人発達障害者の就労支援に携わる。その後、放課後等デイサービスの大手FCチェーンに就職。入社後3ヶ月で本部教室の副教室長として抜擢され、発達障害児の療育プログラムの作成に携わる。2015年6月に独立。現在はフリーランスの療育アドバイザーとして、「アナログゲーム療育」の普及・啓発と療育機関の専門性向上のためのコンサルティングを行っている。
ライター自己紹介
東京都内在住大学4年生
大学でパソコン通訳(話している内容を聴覚障害者のためにパソコン上におこすこと)や知的・発達障害児の学童福祉施設でアルバイトをしています。障害を持っている人と接するなかで、「障害を持っていてもできることはたくさんあるのにそれが発揮されていない現状は、障害者自身だけでなく社会にとっても、もったいないことだ」と感じています。「障害者と接することで、障害者も障害者に関わる人も学ぶことができる=両育」という考え方に惹かれ、このような考え方がもっと広がるといいと思い、両育わーるどでインターンをしています。
text by aizaki nana