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職業体験で中学生2人が気づいたコミュニケーションの大切さ

職業体験で中学生2人が気づいた
コミュニケーションの大切さ

調布市内の学校に通う中学2年生の内川さんと森さん。学校の職業体験にてふみ月の会での仕事を選びました。職業体験とはいえ、職員と同じプログラムを5日間体験。普段とは違う生活にとまどいながら、チャレンジし、なにを思ったのか。二人にお話を伺いました。

 

chuugakusei (2)なぜ職業体験に福祉現場を選んでみようと思ったんですか?

森さん
学校の職業体験で、やってみたい仕事についてアンケートをとって、行き先を決めました。保育園やレストラン、カフェ、コンビニなどの仕事もありましたが、僕たちは福祉の現場を希望しました。父が福祉関係の仕事をやって、ボランティア活動が身近な存在だったのでやってみようかなと思ったからです。

 

内川さん

僕は、こういう職業体験ができる機会はなかなかないので、普段できないことをやってみようと思って参加しました。

 

行ってみてどうでしたか?

森さん
障害を持っている子との関わり方が難しかったです。最初はコミュニケーションがうまくとれませんでした。

内川さん
相手が何をしてほしいか考えるのではなく、何かを達成するためのお手伝いをどうしてあげるか、ということが大事だと思いました。

 

二人が通っている学校では、障害を持っている子と一緒になる機会はあるんですか?

森さん
同じクラスにはいませんが、特別学級があります。学校には通えるけれど、みんなにはついていけない子たちが別クラスにいます。運動会で一緒にリレーをやったり。ただ、学校ではあまり関わることはありません。

 

今回の職業体験ではどんな活動をしたんでしょうか。

森さん
子どもたちが来る前に掃除をして、職員さんと一緒に送迎に行き、登校してきた後は授業のお手伝いですね。お菓子を一緒に作ったり、運動の補助をしました。僕たちと同い年の子もいれば小学校2年生から高校生までいました。1日1人、毎日違う子と接しました。

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とまどったことはありましたか?

内川さん
水泳の授業があって顔を水面に浸ける練習などをするときに、全員一緒に同じことをするのが難しかったですね。「あっちに行ってみよう」と声をかけても動けない子もいますし、何回も同じことを言わないとわかってもらえません。根気よくやらないと。

森さん
担当の職員の方からは自然体でやってと言われて、普通に接すればなんとかなるのかなぁと思ってやっていました。心を通わせるところまでできたかはわかりませんが、最後の方はコミュニケーションがとれてきました。

 

意志の疎通が難しいのは大変ですね。

内川さん
最初はびっくりしました。でも、何回も言って聞かせるしかないです。時間はかかるんですけど、わかってくれます。僕たちも知っている人が少ないのといつもと環境が違うので緊張しました。施設の子も知らない人が来たと思って遠ざかってしまうので、距離感をどう縮めるかに苦労しました。

森さん
直接説明できなくても、なにかコツみたいなものがわかると、通じているのかなって思いました。やっているうちに身に付いたというのか。

 

utikawa何日目にコツがわかったんですか?

内川さん
木曜か、水曜……中日ぐらいでした。きっかけは本の読み聞かせをやったときです。速く読むとついていけないし、遅く読むと待てない。全体の雰囲気をなんとなく感じなきゃいけないんだなっと思ったときに、わかったような気がしました。それまでは、自分のペースで読んでいたんですが、相手のペースを意識して読むようになりました。

 

 

5日間の体験でしたが、最終日は手ごたえがあったんですか?

内川さん
はい。みんなと一緒にコミュニケーションをとって、とれないにしてもちょっと気持ちがわかったり、向こうから「ありがとう」と声をかけてくれたことが嬉しかったです。

森さん
初日は緊張もあって自分たちから進んでできることはあまりありませんでした。5日行ったことでずいぶん変わったなと思います。最終日になると環境にも慣れて、みんなの顔もわかって心が通じた瞬間もあったかなと思います。担当している子とパズルで遊んだんですが、そこの子から「一緒に遊んでくれてありがとう」と言ってくれたのは僕も嬉しかったです。

 

人との関わりあいの中で、人は成長する

 

やってみて良かったことと困ったことを教えてください。

内川さん
よかったことは、最初は施設の子どもたちは僕たちに対して警戒心があったけど、最後には仲良くなれたことが嬉しかったです。最初はどうしたらいいのかわからなくて、森くんと二人でしゃべっていると、子どもたちも近づきがたいんですよね。そこはちゃんとやらないとな、と思いました。

森さん
困ったことは話が通じないことです。靴下を脱いだ子がいたので「履いて」と言っても聞いてくれません。何度言ってもダメで、スタッフの方に相談したら「靴下を手渡して“これを履いて”と具体的に指示をするように、と教えてもらいました。そう言うと本当に履いてくれて。そういうことを自分で察してできないとダメだなと思いました。

 

職業体験を通じてコミュニケーションの取り方を学べたんでしょうか。

森さん
自分の話を聞いてくれない難しい相手でも、関わりあえることがわかりました。将来、社会でも活かせる場面がくるかもしれません。人との関わりあいの中で、人は成長すると思うので、関わりを持ちにくい人とでもコミュニケーションをとることが必要だと思いました。

内川さん
難しくても最後はチャレンジしてみようと思いました。職員の方から「最初は人間じゃないと思うかもしれない」と言われました。でも、人としてのぬくもりが会話の中で伝わることがあります。普段の行動にも表れるものもあります。最初はびっくりしても、頑張ってコミュニケーションをとり続けていると、やっぱり同じ人間だなと感じました。スタッフの方からのアドバイスで印象に残っているのが、「障害者だからといって善悪の判断を緩めたり、失くしてはいけない」という言葉です。自分の軸を保っていかないと、なにをやっているのかわからないというか。悪いことをやっているけど、障害者だから仕方ない、という考え方ではいけない。同じ人間だからこそ、ルールを守らないといけないから、ちゃんと「ダメだよ」と言ってあげないと、と思いました。

 

mori (2)森さんはお父さんが福祉関係のお仕事だと言っていました。将来は福祉方面に興味があるんですか?

森さん
将来の夢はまだないんです。職業体験で、できれば将来の夢に近いものを選ぼうと思っていたんですが、そこまでの業種はありませんでした。父が携わっている福祉の現場が身近な仕事だったので選んでみました。自分ができないから助けてあげるんだと思うんですが、人を助けるって大変だなと思いました。父の仕事と同じではありませんでしたが「こんな大変な仕事をしているんだな」と驚きました。毎日帰ってくるのは遅いし、あまり話す機会もないんですが、凄い仕事をしていると実感しました。

内川さん
僕は職業を決めるのではなく、「こういう人になりたい」と思ってきました。直接なりたい仕事は今はありません。いろんなことを経験して、暗中模索というか、いろんなことをかき分けてやりたいことを探していきたいと考えています。そういうことが大事なのかなって思いました。

 

内川さんが一番尊敬している人はだれなんですか?

内川さん
恥ずかしいんですけど、お父さんです(笑)。普通のサラリーマンなんですが、いろんなことを知っていたり、尊敬しています。直接言ったことはないんですけど(笑)。

 

最後にこれは言っておきたい、ということがあったら教えてください。

内川さん
いま中2で、今度中3になります。すぐに入試の準備があります。忙しくても時間は作れるので、機会があったら他の人にも体験してほしいと思います。最初は難しいけど、やっていけば楽しいと思う人もいると思います。みんなが障害者の人と気軽につながれるといいなと思います。

森さん
普段自分が暮らしている世界観の中に、違うものを取り入れていけば新しい道というか、他に見えてくるものがあると思います。僕は小学校のときに、特別学級の子たちと同じクラスだったことがありました。障害者ということで、関わりがうまく持てなくて、僕もクラスのみんなも特別学級の子を孤立させてしまいました。今回の体験で、コミュニケーションの重要さがわかったので話していけばわかると思いました。人と違うから関わらないんじゃなくて、関わりを持つことが大切なんだと思いました。

 

 

 

2014/7/20
Text:四街道ふみ
独立行政法人福祉医療機構 社会福祉振興助成事業