【240122開催報告】第三回難病者の社会参加を考える議員勉強会~RDD記念イベント~
当日のアーカイブ動画(第三部録画忘れ)
開催報告
今回の勉強会は今までと違い議員自らが難病当事者であり、自分の体験談を踏まえながら如何に議会に訴えかけていったか、どの様な経緯で訴えを実現させていったかなど聞く事が出来ました。
全体としては3部構成となっており1部で荒川区議会議員の夏目亜季(なつめあき)さん、伊奈町議会議員の仲島雄大(なかじまゆうた)さんから難病当事者からの自己体験を踏まえた議員活動内容を聞かせて頂きました。二人に共通している事は、 “あまり知られていない病気の為に治療含めた対処方法が分からない” “一見、健常そうに見える為、治療中に副作用や悪化した場合周りの理解が得にくい”などがありました。
具体的に荒川区の夏目議員は十七歳の高校生の時、自己免疫性溶血性貧血という難病に罹患したものの、二十歳から上京しアイドルとして芸能活動をしていました。その後、再発してしまい治療の為ステロイドを投薬。副作用で顔がむくんでしまいましたが事情が分からない人からは「自己管理が足りない」と周りの理解を得る事が難しかったと言います。その上、全身性エリテマトーデスや子宮頸がんなど立て続けに病気を経験したにも関わらず彼女が持つ逆境力で苦境をバネにして講演活動を開始しました。その後、様々な人々との出会いを通じ「政治家は間接的に人の命を救える仕事」との信念から2017年に議員として当選。議員活動の一環としてとして自分の経験をもとに本議会、予算・決算委員会、また区の職員に働きかけ共感を得る事によって難病者の移動費用を支援する『福祉タクシー』事業が来年度荒川区で指定難病にも対象拡大が開始される予定です。
伊奈町の仲島議員は同じく“見た目が健康そうに見える”ものの亡き安倍晋三元首相も患っていた潰瘍性大腸炎に20代半ばに罹患。初めはストレスによる腸炎と言われる等、正確に診断できる病院がなかったが、2年かけて確定診断されました。然しながら難病を治療できる医者や治療薬がなく20年間、症状に悩まされていたとの事です。その後、良い医者と薬に出会い症状は改善されるものの、症状には良い時、悪い時の波があり如何に良い状態を維持するかが大事と実感。また難病患者にとって生活を成り立たせる為の就労が一番の課題だと痛感したとの事でした。同じ患者同士で情報を共有し合う「埼玉IBDの会」へ入会し活動の傍ら「見た目では分からない難病患者も、健常な人と一緒に働ける」と言う信念の元、2023年から自ら政治の世界に入り、“難病患者でもやりたい事を諦めないで欲しい”と自ら難病当事者という事を開示し様々な活動を続けています。
前回9月の一般質問では『次期障がい福祉計画』策定時において「難病当事者の意見を聞くべき」と訴える事によって県難病協議会を対象に加え、ヒアリング手段として移動の負荷がかからないWeb会議も実現させています。
両議員ともに難病患者と言う目線から、自己経験に基づく難病当事者ならではの声を上げ議会活動に繋げています。その情熱や活動力に、聞いている一同感心させられ、政策実現方法についても聞き応えがありました。
また引き続き当研究会代表、重光喬之(しげみつたかゆき)氏より「難病を取り巻く社会的な状況」の発表では難病患者の現状、山梨県や明石市での自治体における難病患者向けの取り組み、東京新聞で取り上げられた難病患者の悲痛な声などの説明がありました。
2部「難病に関する今後のアプローチ」では今まで一般質問で難病を取り上げた議員より様々な提案が挙げられました。多かったのは難病患者が働く事に自信が持てず、遠慮してしまうという事です。そこで具体的に挙げられたのが、『特定医療費(指定難病)受給者証の更新時に状態を聞く』『商工会に働きかけ難病患者でも応募ができる人材サイトの構築』、『自分自身を見つめ直すツールを作る』などの声が上がりました。また東京都では(障害者の生活実態)基礎調査の段階で「何が不便か?」を聞くのではなく「どの様に働きたいですか」の様な“本人がやりたい”内容を聞くなど前向きになれる質問を投げかける事も有効ではないか。との声も上がりました。
3部のグループディスカッションで挙がった内容としては事情により公開動画でカットになっています。全体を通して感じたのは、就労について難病患者自身の課題は『なかなか声をあげる機会が無い』と言う事です。本人が遠慮してしまったり、体力的にも余裕がないなどが理由として挙げられます。また行政側として当事者の声を具体的に、効率的に拾っていく方法を探って行く事が必要と感じます。また行政だけではなく民間企業側にも難病者の就労問題をアプローチできないか。その為の現状の周知も重要との声も上がりました。
昨今、行政や新聞でも難病問題が取り上げられて来ています。今回は難病当事者が市民活動家として、また議員として“声をあげていく”事の大事さを学ばせて頂いた勉強会でした。そしてその思いを共有し多様性を実現して行く自治体の質がこれから問われて行く良い機会だったと感じる事ができました。
袖ケ浦市議会議員 伊東あきら
当日のグループディスカッションの記録
世界希少・難治性疾患の日(RDD)とは
本議員勉強会は、世界希少・難治性疾患の日(RDD)の記念イベントとして開催されました。
希少・難治性疾患とは、患者数が少ないことや、病気のメカニズムが複雑なことなどから、治療・創薬の研究が進まない疾患を指します。 Rare Disease Day (世界希少・難治性疾患の日、以下RDD)は、より良い診断や治療による希少・難治性疾患の患者さんの生活の質(QOL)の向上を目指して、スウェーデンで2008年から始まった活動です。 現在は述べ100カ国でRDDが開催されています。日本では、2010年の東京開催を皮切りにして、毎年着実に開催地域が増えています。 来場者・参加者は、患者・家族や関係者に加え、医療従事者、医薬品研究開発者、これから本領域にて研究開発を志す方々、そして一般の皆様まで多種多様です。 RDDは、希少・難治性疾患患者・家族と一般社会をつなぐことのできる企画として、年々その認識度・重要度が高まっています。(RDD JAPAN HPより引用)
RDD Japan 2024 パネル一覧
https://rddjapan.info/2024/panel/
イベント案内
第1回、第2回と重ねてきました当勉強会ですが、次回で一旦完結となります。次回は、難病のある議員、これまで質問をしてきた議員からお話しします。その後、皆さんと一緒に、難病で困難を抱えている人が少しでも暮らしやすくなる、就労という社会参加することができる、そのための後押しを地方議員として議会でどのように進めることができるかを共に考えていけたらと思っています。
(前回の告知文再掲)
難病のある人は、日本に700万人以上いると推定されています。この人数は、障害者手帳保有者727万人(平成30年度福祉行政報告例及び衛生行政報告例より)とほぼ同数に相当します。難病者は皆、終わりの見えない治療と日常生活の両立、学校や職場での人間関係、生活費や医療費に充てる収入、恋愛や結婚などに困難や悩みを抱えています。
障害や指定難病でもまだ支援が足りない状況ですが、「難病」については国の制度の狭間で支援が進まないだけでなく、当事者が声を挙げられる状態にない、問題が知られていない、などの理由でこれまで地方議会でもテーマに掲げる人が少ない現状があります。国の制度がないからこそ、自治体の出番です!また、厚生労働省は「障害福祉計画及び障害児福祉計画を定めるに当たっての基本的な方針」の中で、「障害者総合支援法に基づく難病患者への支援の明確化」を打ち出していることから、今後の計画改訂で「難病」への対応を自治体が行なっているかを議会でチェックすることも必要です。
*本勉強会では医療・福祉基盤ではなく、就労・社会参加をテーマとしています。
■開催時期
2024年1月22日(月)20:00〜21:30
■実施形態
・オンライン(Zoom)
・アーカイブ録画配信
■対象者
・全国市区町村・都道府県の現職議員
・議員経験者
・議員インターン
◾️プログラム
1、当事者議員からの体験談、質疑応答(30分)
荒川区議会議員 夏目亜季 氏
伊奈町議会議員 仲島雄大 氏
2、過去の一般質問共有とこれから有効な質問にむけて(30分)
鹿嶋市議会議員 佐藤信成 氏
目黒区議会議員 たぞえ麻友 氏
3、グループディスカッション(30分)
■運営
・主催:難病者の社会参加を考える研究会
・共催:パブリック・ラボ、ひろしま議員女子会、女性議員を増やす会 なないろの風
■参考資料・動画
⓵難病者の社会参加白書
②難病×働くを可視化するはたらく難病ラボ
③難病のある人の雇用に関する全自治体調査2022
④第1回勉強会の開催報告
⑤第2回勉強会の開催報告
プログラム1 登壇者紹介
荒川区議会議員 夏目亜季氏(なつめあき)氏
京都府舞鶴市出身 1990年10月26日生まれ
現在、荒川区議会議員2期。
17歳から難病(SLE)と闘病。20歳で上京し芸能活動に勤しむ中、23歳で子宮頸がんと診断。その後も度重なる難病の再燃など、自分の経験から講演の仕事を始めたが「伝えるだけではなく、制度で人を救いたい」と感じ政治家になると決心。2022年「逆境力〜難病、子宮頸がんを乗り越えアイドルから政治家へ〜」を出版し現在もライブや講演を行なっている。難病の方も障がいのある方も安心して生きやすい世の中、予防して救える命はとりこぼさないをモットーに日々活動中。
伊奈町議会議員 仲島雄大(なかじまゆうた)氏
1967年7月26日生まれ
埼玉県出身(生まれは、石川県輪島市)
2023年統一地方選挙にて当選、現在埼玉県伊奈町議会議員1期目。
「潰瘍性大腸炎」罹患歴約30年
難病でも自分のやりたい事を諦めないで欲しいという思いがあり、政治活動時から一貫して難病当事者であることを開示。自動車ディーラー整備士(在職27年)、自動車整備士養成校教員等を経験。現在は、議員と自動車ディーラー(アドバイザー的な立場)での兼職。
24歳ころから下痢、下血や粘液便があり、確定に約2年を費やした。40歳半ばに仕事への執着心がなくなり、社会への恩返し(社会貢献活動)として「埼玉IBDの会」に携わる。患者会での経験等から議員の道を志し、現在に至る。